プチ連載

□Dear...sister〜親愛なる君へ贈る永遠の歌〜
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恭弥は、かなりの心配性。
こうして集まっている生徒会役員達は、元は風紀委員にいた生徒ばかり。だから、喧嘩はかなり強い。それ故に、私のボディーガードとして生徒会役員になれと命じたのだ。
格好良いのが多いのは、別に顔で選んだからじゃない。風紀委員から生徒会役員になるに伴い、リーゼントだった髪型を普通に戻した。そしたら、たまたま格好良かっただけの話。
元々風紀委員にいたから、恭弥と草壁の命令には逆らえない。未だに、頭が上がらない。
だから、朝の登校した時の様子で、咄嗟に草壁が判断したのだろうな。

「何か悩み事でも…?」

心配そうに聞いてくる書記。
仕事に私情を挟むのは申し訳ないし、余計な心配は掛けたくないと、口を接ぐんだ。

「ううん。何でもない。それより、何か用があったんじゃないの?」

「あ、はい…サッカー部が予算案を提出して来たのですが…」

言葉を濁しながら、書記はサッカー部が提出したという予算案を私に渡してきた。
予算なら普通に通せばいい話。どうしてそんなに渋るんだろう。
けれど、渡された予算案を見て、渋っていた理由が理解出来た。
これ…通せないわね…。

「どうして新品のボール代があるの?しかも二十個も」

ボール代だけでも、二十もあったら馬鹿にならない。
それに、サッカー部には、こんなに部費を出す価値なんてない。強いならまだしも、弱小サッカー部に出す部費なんてない。

部費は、どの部活にも一律でしか渡さない。その制度を、生徒会では一律部費と言っている。 一律部費よりも、多く貰えるか、少なく貰えるかは、大会での成績次第。強いか弱いかで、それよりも高いか低いかが決まる。
悪いけれど、サッカー部は弱い。だから、一律部費通りには与えられない。
弱い部活の部費が、強い部活の部費に動いているだけで、全体の予算は変わらない。
書記に問い掛けると、苦い顔をしながら口を開いてくれた。

「ボールが古いから、弱くなった。新しかったら、大会での成績も残せると、言っていました」


呆れた…。
まるで、低学年の子供の我儘を聞いている様ね…。馬鹿としか言い様がないわ。

「馬鹿な屁理屈ね。いいわ。放課後、私が言いに行く。この書類、シュレッダーに掛けといて」

「解りました」

一礼すると、渡した書類を手にして、引き下がる。
下らない屁理屈を並べる部活には、生徒会長自らが出向いてあげないとね。説教、しっかりしてあげないと。生徒指導も、生徒会長の務め。
恭弥ならきっと、こういう時は真っ先に咬み殺すって言うんだろうな。想像したら、つい笑ってしまった。
今頃恭弥、応接室にいるんだろうな。それとも、サボっている生徒を取り締まっているのかな…。

(私も、後で見回りしないと)

まだ、校内の現状把握が済んでいない。一日に二回はしないと、すっきりしないし、仕事をサボった気分になる。 義務って訳じゃないけど、私の気が済まないだけ。
風紀委員と生徒会。繋がっているけど、一つにはれない。
どっちにも、大切な役割があるから。まるで、私と恭弥みたいで、凄くもどかしい。
想っているのに告げられない。
告げられないけど想っている。

兄弟の繋がりを捨てて、恋人になるか…。
恋人の繋がりを選ばないで、姉弟として居続けるか…。

ねぇ恭弥…。
私は…どうしたらいいの…?


* * *


「サッカー部の部長いる?」

「せ、生徒会長!!??」

いきなりの私の訪問に驚いて、解りやすく慌ただしくなった。
部室に来た訳じゃなくて、グランドで練習しているサッカー部員を捕まえて、聞いてみた。
勿論、私の後ろにはボディーガードの生徒会役員もいる。連れて行かないで行ったら、恭弥にチクられて怒られちゃうからね。
部長や副部長以外は、どうして生徒会長自らサッカー部に?と思って、不思議で仕方ないんだろうなぁ。まぁ、滅多に部活している生徒に声を掛けたりなんてしないからね。

「部長と話がしたいんだけど」

「は、はい!!ちょっと待って下さい!!部長ー!」

転びそうに慌てながら、部員は部室へと走っていく。
部室にいるんだ…と確信し、私も部室へと向かう。
部室からは、部長を呼んだ部員と部長が話をしている。どうやら、副部長と部長みたいね。
中々顔を出さない辺り、中で言い合っているんだろうな…との検討は簡単に付いた。時間がないし、はっきり言って、サッカー部に裂く時間は全くない。手早く済ませたくて、ドアをノックし二人を呼び付ける。

「ちょっといいかしら」

声を掛けると、中から部長らしき生徒が副部長と一緒に出てきた。何を言われるのか解っているのかいないのか、かなり動揺している。副部長の方は、明らかに怯えている。
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