プチ連載

□Dear...sister〜親愛なる君へ贈る永遠の歌〜
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夢か現実なのか…



一瞬理解出来なかった。



未だに、よく解らない…。





Dear sister...
〜親愛なる君へ贈る永遠の歌〜






朝の生徒会室。
皆が登校して、HRを受けている時間に、私は書類整理をしながら上の空。

昨日の事が、頭から離れない。
夢なのか現実なのか区別がつかなくて、何だか、恭弥に会うのが恥ずかしい。

今日の朝、普通に起こされて、普通に門で服装検査をしていた。
もしかしたら夢かな?と思ったけど、未だに耳が熱い。触っただけでも、火照っているのが解るくらいに…。

『好きだよ…』

そう、恭弥が言った気がした。寝呆けていたから、はっきりそうとは言えないけど、でも、そう聞こえた。
その言葉を、受け入れるのは簡単。だけど私と恭弥は姉弟。恋人になったら、いつかは別れが来る。けど姉弟のままいれれば、別れなんて来ない。死なない限りは…。
姉として好きなのか、女として好きなのか、どっちなんだろう。


(でも、気の所為じゃ無かったら…キス…された…よね…)


夢なのか現実なのか、解らなくなる。その原因がこれ。
告白されたのは、たぶん現実。だけど、キスは淡く熱が残っているだけで、現実に結び付けるには曖昧な感触。
寝ていたから、夢なんだとすぐに眠りに入ってしまった。
だから、夢なのか現実なのか区別がつかない。こんな事、恭弥に聞けないし…。言うとも思わない。勘違いだったら、とんだ恥曝しなだけ。

(今日、普通に出来るかなぁ…)

いつも通りに出来る自信ないけど、何事もなかったかの様に接しなきゃ…。恭弥との関係、崩したくない。
姉弟という関係が、一番心地いい。一緒にいるのが当たり前だし、離れる事がない。ずっと、一緒にいられる。

正直、恭弥に抱き締められると嬉しい。落ち着くし安心する。
恭弥といる時は飾らなくていいし、生徒会長の重荷も下ろす事が出来る。だから、昨日親が帰ってこなくて、本当に幸せだった。
何かと、親は私に期待しているから。恭弥を放任していた自分の責任なのに、全て恭弥自身の所為にして、私に逃げてくる。それが嫌で、恭弥と二人でいるのが幸せで嬉しくて、親はいなくて良いとさえ思う。恭弥が、傍にいてくれればいい。他は何もいらない。

再婚した時、一人でいる恭弥の背中がやけに淋しく見えて、放っておけなかった。堪らず声を掛けて、手を差し伸べたくなった。 差し伸べた手を握り返してくれた恭弥に、私は優しく笑い掛けた。
恭弥に関わろうとしない親に失望して、自分が恭弥と一緒にいると決めた。
小さい頃から喧嘩が強かった恭弥は、学校でも家でも一人を好んで、決して群れる事をしなかった。だけど、差し伸べた手を握り締めた恭弥の淋しさを疑えず、恭弥から離れられなかった。
どんな時でも、恭弥の味方になり、少しでも長く傍にいた。本当に淋しくなかったんだろうけど、それでも恭弥の傍に居続けた。
本来なら、親から貰う筈の温もり、優しさ、愛情。それらを知らない恭弥に、教えてあげたかった。とても、素晴らしいものなんだよと、知ってほしかった。
誰かの温もりは、安心するんだよと、恭弥に知ってもらいたかった。少しでも寂しさを紛らわせられるのなら、私がいつだって恭弥の傍にいてあげる。だから、遠慮なく寄り掛かって欲しい。
恭弥との距離を埋めるように、時間を共に過ごしていった。親がいない時も、ずっと傍にいた。 そうして、恭弥が懐いてくれる様になり、凄く嬉しかった。私を受け入れてくれた恭弥が、可愛くて愛しくて、仕方なかった。
初めて抱き締めてもらった時、幸せ過ぎて泣きそうになったのを覚えている。恭弥も、私を必要としてくれる。私も、恭弥が必要で、今じゃ絶対に手放せない存在。
恭弥を、当たり前の様に受け入れているのは、私がただ単に幸せだから。

恭弥を、愛しているから。
二人の時間が愛しくて。
甘えてくる恭弥が愛しくて。
恭弥との全ての事が愛しくて。


キスされていたらいいな…。


そう、思っている。
告白だって、受け入れるのは簡単。だって私も、同じ気持ちなんだから。
けれど、兄弟として一緒にいる方が、お互い傷付かない。離れる事を、恐がらずに済む。
恭弥と、絶対に離れたくない。

「…長…会長!」

離れる時が来るくらいなら、姉弟でいる方がいい。

「会長!!」

「えっ!?あっ…ごめん…」

呼ばれていたのにやっと気付いて、現実に引き戻された。
何回くらい呼ばれたんだろう…。全然気付かなかった。
珍しく、一限目から生徒会役員が揃っている。朝からこんな感じの上の空だったから、心配になり傍にいてくれているのだ。まぁ、多分草壁の命令だろうけど。
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