プチ連載

□Dear...sister〜親愛なる君へ贈る永遠の歌〜
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情けない…。
そんな事解っているけど、最愛の人は絶対に手放したくない。
真剣に行動しないと…。

「ねぇ恭弥。明日も一緒に帰れる?明日も生徒会ないから」

「帰れるよ。最近、風紀もあまり乱れてないからね。特に仕事もないし」

「なら、また一緒に帰れるね」

後ろを振り向き、桜子は可愛い笑顔を浮かべてくれた。
誰よりも近い距離で、桜子といられる。けど、姉弟というだけで、心の距離は一気に長くなる。
僕にとって姉弟なんて、下らない柵でしかない。けど、桜子にとったら柵でも何でもない。
だって、桜子から僕には恋愛感情なんて無いから。柵以前に、姉弟になったのは当たり前の事だと認識している。
僕が、桜子をこうして抱き締められるのは、姉弟だから。
それ以外の理由なんて、ない。

「明日は応接室にいる。それとも、僕が迎えに行こうか?」

「私が行く。恭弥迎えに行きながら、校内の様子みたいし」

「じゃぁ待ってるよ」

「うん」

会話だけなら、確実に恋人同士の会話。だけど、恋人になる確立は極めて低いって事、みんな知らないんだろうな…。
これが当たり前の会話なのに、なんで姉弟として出会ったんだろう…。
ただの悪戯?それとも、必然?
僕には、無理矢理奪って自分のモノにしろと言われている様にしか見えない。

傷つけたくない。
けど、桜子がどうしても欲しい。
奪う覚悟はある。だけど、無理矢理奪って桜子を傷つけたら…と考えると、今すぐ行動には起こせない。
いつかは奪うとか言っといて、結局は傷付けるのが怖くて動けないだけ。

(こんなの…らしくない…)

怖気付いているなんて、僕らしくない。行動に移せないなんて、最強風紀委員長の名が聞いて呆れる。
だけど、最愛の人を傷付けたくないのは、誰もが思う事。
でも、僕と桜子はそうしなきゃ結ばれない。吹っ切らないと、次へは進めない。
僕の腕の中で、無邪気に笑っている桜子の笑顔を、僕は守り通せるんだろうか…。
無理矢理奪っても、笑顔を浮かべてくれる…?


いや…無理だろうな…。
何が何でも、そんな考え都合が良すぎる。


そんな巧く、行く訳無い。


「恭弥とこうしてると、凄い落ち着く。何でだろうね」

「僕も落ち着くから、桜子も落ち着くのは当たり前」

「何それ…」

呆れながら笑う桜子。
例えば、抱き締めただけで気持ちが伝わるなら、きっと桜子には、とっくに僕の気持ちが伝わっているんだろうな…。
けど、そうだったら不都合。普通に抱き締められないから。
姉弟として桜子を抱き締められる。それが嬉しいのか悲しいのかは解らない。それでも、桜子の笑顔を誰よりも近くで見れるのは、すごく幸せ。
この笑顔が、僕だけのものになればいいのに…。
手が届きそうで届かなくて、伸ばす事さえ躊躇っている僕に、桜子は幸せな言葉ばかりをくれる。
桜子がくれる全ての感情は、桜子にしか溶かせない。僕に、こんな感情をくれるのは、桜子だけだから。他の奴等からは得られない。得ようとも思わない。

いつだって、僕は桜子しか欲しくないから。

「あ、そういえばね、お母さん達、今日帰れないって」

「いつもの事だね。どうでもいいよ」

「そうなんだけどさぁ…」

帰って来なくていい。
どうせ、桜子とのこの時間を邪魔されるだけなんだから。
仕事か何だか知らないけど、あの人達が忙しくて良かった。それくらいしか、言う事ない。

小さい頃から、放任主義だった。再婚しても、それは変わらない。
縛られるのが大嫌いだから、有り難かったけど、本当に僕には無関心だった。けど不思議と、淋しいなんて思わなかった。気楽で良い。そんな事しか思わなかった。
自由に出来るし、何より、何物にも捉われる事なく過ごせて、好きな時に喧嘩が出来た。
町でも有名な人達だったから、言葉通りのやりたい放題な毎日を過ごしていた。
勿論、友達なんて出来る訳もなく、いつも一人だった。まぁ、欲しいなんて思った事もないけどね。
好きな事をして、好きな様に生きていた。そんな僕の人生を、桜子が一瞬で変えてしまった。
再婚する事に興味が無かった。勝手にすれば良いと突っぱねていた。相手にも、連れ子がいるのは聞いていたけど、さして興味は湧かなかった。
しかし、実際に桜子と出会ってみたら、眩しいくらいの笑顔で笑い掛けてくれた。そんな事初めてで、戸惑った。避けられるか逃げられるかしか経験が無かったから、対応に困った。
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