プチ連載

□Dear...sister〜親愛なる君へ贈る永遠の歌〜
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そう思った事なんて…



君が来た時から…



一度もない。





Dear sister...
〜親愛なる君に贈る永遠の歌〜






家に帰り、桜子と二人きりと時間が、一番落ち着く。
邪魔な二人がいないから、桜子を独り占めできる。それが幸せで、片時も離れたくない。
学校では、イメージがあるし、桜子にも迷惑が掛かるからと、あまりくっつかない様にはしている。 あれでも、僕なりに自粛しているつもり。本当なら、もっとずっと一緒にいたい。

「ねぇ恭弥…」

「何?」

「そんなに抱き締められてたら、料理出来ないんだけど…」

「嫌だ」

料理をしている桜子の背中を見ていたら、無償に抱き締めたくなった。我慢出来なくて、離れたくなくて、ずっと抱き締めたまま。
二人きりの時間を、満喫したいから離れるなんて嫌だ。 僕の拒否に呆れているのか、桜子はため息を吐いた。

「家ではこんな姿なんて、普段の風紀委員長からは想像出来ないわね」

「桜子だけが知ってればいいよ」

本当の僕なんて、桜子だけが知ってくれれば良い。それに、こんな姿見せるのなんて、桜子だけ。 他の奴に、見せる意味なんてないし、くだらないだけ。

「あんま甘えないでね。ご飯出来るから、少し待ってて」

「……そう…」

桜子の言葉に、愕然として抱き締めていた腕を放した。
桜子は僕を、弟としてしか見てない。ただ、甘えているようにしか捉えてない。
それが悲しくて、伝わっていないんだと腕を放した。

姉と思った事なんて、ただの一度もない。姉さんて呼んだ事も、一度もない。だって、姉として見ていないから。僕は桜子を、一人の女性としか見ていない。
出会った頃から桜子は可愛くて優しくて、一緒にいて落ち着いた。
あの人達が忙しくて、ろくに僕達の事を見なかった時も、桜子だけは笑顔で僕の傍にいてくれた。
そんな桜子の笑顔を守りたくて、強くなった。元々攻撃的だったから、桜子を守るのには最良の性格だった訳だ。
町の風紀を守るのも、全ては桜子の為。他の意味なんて無い。桜子の笑顔が守れるなら、手段なんて選んでいられない。
桜子に、揉め事の解決をして欲しくないのは、桜子に傷が付かない様にする為。そんな事、僕に任せてくれればいい。桜子がやる事じゃない。

桜子と姉弟と言っても、血の繋がった姉弟じゃない。お互いの親が再婚して、姉弟になっただけ。 戸籍上は姉弟だけど、血筋は全く違う。赤の他人。

姉だからという下らない理由で、優秀に育てられた。あの人達の事だから、桜子を後継ぎにしようとかって考えているんだろうけど、その前に、僕がかっさらって行くけどね。

桜子は僕を、弟としてしか見てない。だけど僕は、桜子を愛している。この気持ちを告げたら、元には戻れない。
でも誰よりも、桜子が欲しい。欲しくて欲しくて堪らない。
桜子の背中を見ながら、こっちを向いてと念を送る。僕らしくない。女々しくて、馬鹿らしくなる。

この気持ちを告げたら、桜子はどんな顔をする?
想像が出来なくて怖いけど、でも、桜子を誰よりも愛しているから。
だからその心、僕だけに渡して欲しいんだ。
今は、告げていい時じゃない。
いつかは、攫っていく覚悟は出来ている。桜子が拒んだ時には、力強くで…。


* * *


食事が終わり、再び桜子を抱き締める。子供じみているんだろうけど、この方が落ち着く。
テレビを見ながら、桜子を背後から抱き締めて寛ぐ。この時間が、一番至福。弟である僕を、桜子は拒まない。男として見てほしいけど、抱き締められるなら弟でもいいなんて、ただの我が儘だよね。
でも、桜子の傍にずっといられるのなら、恋人としてがいい。弟じゃなくて、一人の男として、桜子を守っていきたい。


(僕が、こんな風に想っているなんて、桜子は知らないんだろうなぁ…)

気付いてない。
僕の気持ちに、きっと桜子は全く気付いていない。予想すらしていないんだろうな。
僕の腕の中で、無邪気に笑う桜子。すぐにでも僕のものにしたい。だけど、それをしたらこれから先の桜子との未来が、無くなってしまう。希望さえも残らない気がして、一歩踏み出せない。
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