プチ連載
□Overture puro amore〜純愛序曲〜
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「やっ…あぁっ…やめ…てぇー…」
「おや?辞めてしまっていいんですか?ここは…こんなに蜜が絡み付いているというのに…」
どうして…。
「やぁぁぁ!!」
私はこの人に…。
「犯されているのにイクなんて…。とんだ淫乱ですね」
逆らえないんだろう―…
Overture puro amore.
〜純愛序曲〜
あの日から、私の体はあいつの玩具になった…。
数ヵ月前―…
慌ただしい足音が、廊下に響く。そして、ノックもせずに勢い良く扉を開けた。
「ボス!!あれ…?」
ボスに報告したい事があって、部屋を訪れた。だけど、そこには誰もいなくて、書類なども綺麗に片付けてあった。
ボスが出掛けているなんて聞いてない。けれど、何時もは汚いボスの机が綺麗な所から、ボスが部屋にいた形跡は見受けられない。
何処か近場に出掛けたり、部屋を離れて屋敷内にいる時は、大概散らかっているから。
片付けてあるから、近場に出掛けたんじゃないんだ…。
「つまんないの…」
すぐに帰って来る事はない。そう推測したら、一気に士気が下がった。折角、一番に伝えたい事があったのに…。
溜め息を吐き、あからさまにがっくりと肩を落とした。そして、部屋を後にしようと視線を上げた瞬間、視界の端に何かが映った。
「ん?あっ…」
何かを確認しようと、完全に視線を上げると、椅子に黒い何かを見付けた。その何かが、スーツの上着だと解るのに、あまり時間は要さなかった。
無造作に、畳まれないで掛けてある上着に、少しずつ近付く。
何時もなら、着なくても身なりをきちんと整える為に、持ち歩くはず。それにボスは、あまり上着を脱がない人。
出掛けたとなると、ボスの場合他のファミリーの屋敷に行く可能性が高い。正装を要する用事の筈なのに、どうして上着を持っていかないのかが気になって仕方ない。
思わず上着を手に取り、じーっと見つめる。
「屋敷内にいるのかなぁ…」
出掛けてないで屋敷内に居るのであれば、上着を持っていく必要はない。
机が片付けてあるのは、仕事が一段落したからで、特に用事が出来たとかではないのでは…?
「その可能性あるよね!」
それなら、屋敷内を探せばいい。そう思い、上着を置こうとした。だけど、置こうとした瞬間何かを思いついたかの様に動きを止める。じぃーっと、上着を見つめる。
ボスが愛用しているスーツ。ブランドとかはないけど、着やすくて動きやすいと、気に入っている。
折角、ボスの上着を手に取ったんだ。このまま置くのは、絶対に勿体ない。こんな機会、きっと滅多にない。
憧れに似たこの感情は、きっと恋だと思う。
優しいボスが、誰よりも好き。
振り向いてなんて貰えない。振り向かせるつもりもない。
手が届かないと解っている。
ボスには、可愛い恋人がいるから。だから、少しだけ…。少しだけ、ボスの温もりを感じたい…。
辺りを見渡し、誰もいない事を確認。
「誰も…いないよね…」
キョロキョロと辺りを見渡すが、誰もいない。ボスの部屋なんだから、ボスがいなければ誰もいないのが当たり前なんだけど、一応…ね!
自分一人しかいないと確認してから、ボスの上着をぎゅーっと抱き締める。
香水なのか解らないけど、ボスのいい香が上着から漂ってくる。
ボスの温もりが伝わってきて、つい顔がにやけてしまう。
抱き締めるだけでは足りず、上着を羽織ってみる。
「意外とブカブカ…」
ボス小柄だから、丁度いいくらいだと思っていたけど、意外とデカいんだなぁ…。
当たり前か。男と女なんだから、男の方が華奢に見えても大きいもんね。
上着を羽織り、つい自分だけの世界に浸る。
ボスの上着。
ボスの香り。
ボスの温もり。
抱き締められているみたいで、凄く安心する。
「ボス…」
これが恋じゃなかったら、何なんだろう…。憧れだけじゃ、こんなにときめかないもん。
ボスへの気持ちを再確認。した瞬間に、口から心臓が飛び出そうになる衝撃を受ける。
「そういう趣味がお有りだったんですね」
「っ!!??む、骸!!」
びっ、びっくりしたー…。
思わず叫びそうになっちゃったよ…。
勢い良く振り替えると、こっちを見ながら、ニヤニヤした怪しい笑みを浮かべている骸が、窓に座っていた。
全く気付かなかった…。マフィアの端くれなのに、全く気付かなかった…。
誰もいないの、ちゃんと確かめたのにー!
「貴方が、沢田綱吉を好きだとは気付きませんでしたねぇ」
「い、いつからそこに…」
「初めから」
「初めから…」
全く気が付かなかった。
念の為に辺りを見渡した時は、確かに骸は部屋にいなかった。けれど彼は霧の守護者。姿を消して潜んでいるなんて得意分野。油断していた。