プチ連載

□Dear...sister〜親愛なる君へ贈る永遠の歌〜
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雲雀の呟きに、彼女は頬を膨らませて怒りを顕にする。

「何か言った?」

全く迫力のない怒りに、雲雀は何度目かも解らないため息を吐く。
再び目をつぶり、ソファーで寝る態勢へと入っていく。

「別に。書類は放課後までに出すよ」

「早く出してよ」

「……」

寝返りを打ち、雲雀は返事をする事無く眠りに入る。
口煩い彼女に、これ以上付き合ってられない。適度に止めておかないと、本当に口を塞ぎたくなってしまうから。
返事をしない雲雀に呆れ、彼女は浅いため息を吐くと、再び仕事に入る。

「全く…」

呑気にソファーで寝ている雲雀。邪魔をしようかと考えたけど、暫く不機嫌でいられても厄介だし、朝早かったんだから仕方ないな…と、寝かせてあげる事にした。
朝、早くに起こすだけ起こして、とっとと自分は学校に行ってしまう雲雀が悪い。
そんなに学校がいいのだろうか…。家の方が寛げて安心するのに…。まるで、家に居たくないかの様に、朝早く出て行ってしまう。
起こされた時に、素直に起きて一緒に学校に行けば、時間ギリギリという事はない。だけど、起こしてすぐに学校へ行ってしまうから、一緒に行きたくても、間に合わなくて結局は一緒には行けない。
間に合わないと解っているから、また寝てしまって時間ギリギリになってしまうんだ。

「何でそんな学校が好きなんだろう…」

愛校心が人一倍強い。
まぁ、生徒会長だから少なからず愛校心はあるけれど、雲雀には負ける。
多少校舎が傷付いても、腹を立てはするものの、それはお金の問題で怒るだけ。傷付けた事に関しては、問い詰めたりはしない。

「まぁ、今日の並盛は平和だから、暴れる事はないか」

窓から外を眺め、彼女は再び鳥のさえずりに耳を傾ける。
今日、並盛は平和。雲雀が暴れる事は、多分ない…と思う。
窓を開けて、空気の入れ替えをする。

爽やかな風が、生徒会室を通っていく。雲雀の黒髪を弄ぶも、雲雀が起きる事はない。気持ちよさげに、寝息を立てている。
すると、どこからか聞き覚えのある鳥の鳴き声が聞こえてきた。

「ピィー!」

彼女に一直線に向って来て、生徒会室へと入ってきた。
机に置いてある時計に止まり、毛繕いを始める。
入ってきた黄色くて小さい鳥は、雲雀が連れて歩いている鳥。何故か雲雀に懐いており、肩に止まったり頭に止まったりと、忙しなく雲雀の周りを飛んでいる。たまに姿が見えない時があるが、どこに遊びに行っているのかは不明。
雲雀曰く、「勝手にくっついてくるだけ」と言っているも、雲雀自身、この黄色い小動物が気に入っている様子。決して、追い払おうとはしない。
雲雀に懐いているから、勿論、彼女にも懐いている。

「どこ行ってたの?」

「ピィッ」

羽を広げ、話し掛けているみたいだけど、彼女にはどこなのかは伝わらない。
しかし、あまりの仕草の可愛さに、鳥の頭を撫でて笑い掛ける。

「そうかそうか」

撫でられて、鳥は再び嬉しそうに「ピヨッ」と鳴いた。
話し掛けてくれた事が嬉しく、彼女は上機嫌で椅子に座る。
窓は開けたまま。爽やかな風が入り込み、彼女の髪をも弄ぶ。
真ん丸の目を愛らしく開けて、鳥は羽をばたつかせる。

「サクラコ!サクラコ!」

彼女の名前を連呼した。
自分の名前を呼んでくれた事が嬉しくて、でも不思議で、桜子は鳥を軽く撫でる。

「偉いねぇー。だけど、誰が教えたの?」

教えたのが誰かなんて解っている。けど、敢えて聞きたくなった。ソファーで気持ちよさげに寝ている人への、ちょっとした意地悪。
問い掛けられた鳥は、再び羽を広げると、言葉を発した。

「ヒバリ!ヒバリ!」

「やっぱりね」

予想的中。
他に、この子に名前を教える人なんていやしない。
雲雀に懐いている鳥なんだから、雲雀がよく口にする言葉を覚えるのは自然の流れ。
何故名前を覚えさせたんだろうと、不思議と気にならない。極当たり前の事のように思えて、問い掛ける気さえ起きない。
この子に名前を教えている雲雀の姿を想像してみたら、おかしくて、笑いが込み上げてきた。
教えていなかったとしても、幾らか言葉を話せるし、この子の知能を考えたら、勝手に覚えたというのも頷ける。
どっちみち、名前を呼んでくれた事が嬉しいに、変わりはない。
鳥と騒いでいても、雲雀は全く起きる事はない。声を掛ければすぐに起きるのだろうけど、今は起こす理由はない。
桜子は席を立ち、開け放っていた窓を閉めると、鳥に手を差し伸べた。
手に止まった事を確認し微笑むと、鳥が再びはばたくのを見計らい、腕をおろし歩き出す。桜子の肩に止まり、鳥は「ピィ」と鳴く。
寝ている雲雀に、近くにあった自分の上着をそっと掛けて、鳥に話し掛ける。
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