プチ連載

□Dear...sister〜親愛なる君へ贈る永遠の歌〜
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足早に向かう。



そこには…



君がいるから…。





プチ連載
Dear...sister
〜親愛なる君へ贈る永遠の歌〜





静かな時間が流れる。
物音一つしない生徒会室で、彼女は優雅な時間を、一人で楽しむ。
外から聞こえる、鳥のさえずりに耳を傾け、穏やかな並盛を感じ取る。
他の生徒会の役員達は、文武両道と決められている為、ちゃんと授業に出ている。生徒会役員が頭が悪いんじゃ、生徒の模範になんてなれない。しっかりと勉強をしてもらわないと、一般の生徒への示しがつかない。


っとまぁ、言い訳を考えてみたけれど、実際は、他の役員達は邪魔だから追い払っただけの話。
文武両道じゃなきゃいけないというのも、彼女が勝手に言い訳に使い、そのまま浸透しているだけ。
生徒会長は、特別待遇。授業なんか出なくても、許される。それは彼女が、この校内での絶対権力者だから。

彼女の言う事は、絶対に従わなければならない。そして、絶対服従を誓っているのが、生徒会役員達。どんな事でも、彼女の命令とあらば、彼等は従う。

静かな生徒会室で、彼女は机の上にある時計を軽く指で弾くと、柔らかく笑ってみせた。

「そろそろかな…」

そう呟いた瞬間、静かだった生徒会室に足音が聞こえてきた。
廊下に響き渡り、彼女は誰かを耳で確認する。
この時間に生徒会室に来る生徒なんて、たった一人しかいない。
今はもう教室に入り席について、HRを始めている時間。そのHRに出ないなんて生徒は、極少人数に限られている。
聞こえてきた足音は、生徒会室の前でピタリと止まった。そして、間髪入れずに、ノックもせずに扉が開いた。
誰だか解っているから微笑みで出迎えるも、向こうはかなり不機嫌な表情を浮かべている。

「来る頃だと思った」

告げた言葉に、余計に機嫌を損ねてしまう。怒ってはいるけれど、呆れて諦めているだけ。だけど、言わないと気が済まない。
生徒会室に来たのは、黒髪で黒い学ランを着ている風紀委員長。さっき、生徒会長の挨拶を軽く無視した、風紀委員長の雲雀だった。
生徒会室に入り、後ろ手で扉を閉める。そして、不機嫌だった理由の正体を話し始める。

「いい加減にしてよ。なんで時間ギリギリに来るのさ。生徒会長なら、もっと早く来なよ」

「なら、朝起こしてくれてもいいんじゃない?」

「起こしたって、僕が出て行ったらまた寝るのが悪い。そのまま僕と行けば良いんだよ」

「だって、あんまり早く行っても、やる事なくてつまらないんだもん」

拗ねる様な彼女の口調に、雲雀は大きなため息をついた。

屁理屈ばかりつく生徒会長なんて、聞いたことない。
朝の印象とはだいぶ違う彼女。朝は凛としていたけれど、今はただの拗ねた年頃の女の子。生徒会役員の前では、絶対に見せない顔。
そんな彼女を見て安心した雲雀は、安堵の息をつく。余所行きの彼女の態度は、他人行儀で落ち着かない。
彼女の本当の顔の方が、慣れている分落ち着く。

「仕事なら幾らでもあるはずだよ。生徒会長なんだから」

「そんな朝早くから、仕事やる気になんてならないもん」

「どこまで子供なのさ…」

子供みたいに拗ねて我儘を言う彼女に、雲雀は諦めにも似た溜め息をついた。
何を言っても無駄。そう思い、「もういいや」と匙を投げた。
彼女と話しているのに疲れた雲雀は、目の前にあったソファーに寝転がった。
応接室にあるソファーより、柔らかくて寝心地が良い。彼女が使うから、特注で作ってもらったのだ。勿論、お金は彼女負担。
朝が早いから、どうしても眠くなる。途中で昼寝をしないと、一日が持たない。
生徒会室だったり応接室だったり、屋上だったりと、雲雀の昼寝場所は様々。その日の気分に寄って変えたりしている。今日はたまたま目の前にソファーがあったから、ここに寝る態勢を整えただけ。
別に、ここが気に入っている訳ではない。まぁ、彼女の傍なら安心して眠れるのに、変わりはないけれど。
雲雀が目をつぶり寝ようとしていた時、彼女は机に散乱していた書類を片付けながら、雲雀に話し掛ける。

「あ、風紀委員長さん。先月の違反者リストと、取り締まり結果の書類が出てないけど?」

笑顔で、生徒会長として仕事を促し、にこっと笑い掛けられた。彼女が肩書きで呼ぶ時は、大抵仕事関係で用がある時。
寝ようとしていた雲雀は目を開けて、拗ねる様な表情を浮かべる。

「さっき、やる気出ないとか言ってなかったっけ?」

「それは朝早い時!今はちゃんと仕事しなきゃいけない時間だからね」

「また屁理屈…」

あぁ言えばこう言う彼女の口を、いっその事塞いでしまいたい。だけど、そんな事をしたら、一生口を利いてもらえない。そんな気がして、何とか悪態で留めておく。
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