プチ連載

□捕われの姫の哀れな末路
1ページ/5ページ


幼馴染み。それ以上の関係は、何?





捕らわれ姫の哀れな末路
*第一話*






幼馴染み。
だけど、私の幼馴染みは、一般的に言う幼馴染みとは違うところがある。
それは、不良の頂点に立っている人ということ。
風紀委員長で、風紀を乱す奴を許さない。並盛で、最強の名を欲しいままにしている幼馴染み。幼馴染みから、恋人に発展する可能性が、極めて低いということ。

そんな強い幼馴染みに、私はいつもくっついて歩いていた。

いつも、私を守ってくれた。
幼稚園の時に、男子に虐められた時や、小学校で女子に虐められた時も、恭弥は私を守ってくれた。私は、それが嬉しくて嬉しくて、恭弥が格好よく見えた。輝いて見えた。

いつも、私を守ってくれた。
いつも、傍にいてくれた。

小さい頃から、恭弥は強かった。誰も逆らえない。口答えすら出来なかった。
唯一、恭弥に口答え出来る子なんて私くらいしかいなかった。口答えというより、あの時は制止の言葉がほとんどだった。
戦い好きは、昔とあまり変わっていない。っというより、恭弥が相変わらずなんだ。

小さい頃から、恭弥に敵なんていなかった。
強い恭弥と一緒にいれば大丈夫。虐められても、恭弥が守ってくれる。
だから、ずっと恭弥の隣にいた。いや、ずっと隣にいたいと、望んでいただけなんだ。

それに、本当はとっくに解っていた。
恭弥は、私を守ってくれているんじゃないって。風紀を正しているだけだって。
きっと恭弥は、付いてくる私をいつもくっついてくる鬱陶しい子だな…。くらいにしか思ってないのだろう。

解っていた。
恭弥が、私に興味がないことくらい。私を必要としてくれていないことくらい。

解っていた。
けれど気付きたくないから、気付かぬフリをしていただけ。

ただの幼馴染みでしかないことが、すごく悲しかった。それ以上になれないことに、絶望を感じた。どこまで行っても、幼馴染みでしかない関係。
恭弥は私を、一人の女の子として見てはくれていない。
幼馴染みと思ってくれているのかさえ危うい。そんな、離れたらすぐに意味をなくしてしまうような関係なんだ。すぐに、壊れてしまう関係。

だけど、気付いたら恭弥にすべてを奪われていた。
そう。いつも守ってくれる恭弥を(私の勝手な思い違い。でも救われたことに代わりはないから)、私は好きになっていた。
幼馴染みなんて関係から抜け出したい。恋人になりたいなんて、無理な願いを抱くようになった。

恭弥は私を女としては見てくれていない。だったら、女を意識させるようなことをすればいいんだ。そう思い、私は同じクラスの男子と付き合ってみた。
恭弥と一緒にいるから敬遠されがちだが、意外に私はモテるということが判明した。そして、恭弥もモテる。当たり前だよね。恭弥格好いいし。(惚れた弱み?)

男と手を繋いで歩いていれば、意識してくれるんじゃないかと思った。だから、好きでもない奴と、放課後に手を繋いで帰ってみた。
恭弥のことだから、どこかでこの光景を見ているはず。けど、結果は予想とは全く違う展開だった。
意識してくれたのかどうかは解らないが、恭弥はいきなり男をトンファーで殴った。そして、気絶した男を放って、私の腕を力一杯掴むと、いきなり引っ張った。(男は草壁が後始末しました)

「きょ、恭弥痛い…」

私の訴えも虚しく、恭弥は何の躊躇いもなく応接室へと向かっていった。
少しだけ、恭弥に恐怖を感じた。思惑通りに行ったはずなのに、恭弥が怖かった。
いつも、怖がったりなんてしなかったのに、その日は恭弥が怖くて仕方なかった。
応接室に着くまで、怖くて話しかけられなかった。話しかけるなという、雰囲気が出ていて、話し掛けることすら出来なかった。そして応接室に着いて、いきなり恭弥は私をソファーへと投げ出した。

「きゃっ!ちょっ!」

驚いて、怒る暇なんて与えられなかった。文句を言おうとしたら、その口を塞がれてしまったのだ。
急にきたキスにどう対処していいのか解らずに、私はそのキスを受け入れるしかなかったそれと同時に、恭弥が私をそういう目で見てくれていたんだ、と解り、すごく嬉しかった。嫉妬してくれたんだと、すごく嬉しかった。

けれど、そんな甘くて美味しい展開が、あるわけがなかった。

舌を入れてくる濃厚な口付けに、体の力が抜けていった。
息をしたくても、恭弥の舌が絡み、吐息に似た呼吸しか出来なくて、それを繰り返していたら、酸素が足りなくなってきた。
息苦しくて、涙目になりながら、恭弥とキスしているんだと思うと、顔が赤く染まっていった。
深くて長くて濃厚なキスに、何も知らない私は酔いしれていく。
恭弥とやっと、幼馴染みから恋人になれるんだと、鼓動を高鳴らせた。そして、恭弥の服をぎゅっと掴むと、恭弥は唇を離した。名残惜しそうに、二人の唇は銀糸を引いていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ