プチ連載
□Dear...sister〜親愛なる君へ贈る永遠の歌〜
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才色兼備な彼女。
完璧。清楚、天才。
あと、当てはまる言葉は何があるだろうか…。
プチ連載
Dear...sister
〜親愛なる君へ贈る永遠の歌〜
この並中で、彼女を知らない者なんていない。だって彼女は、並中一の決定権を持つ権力者。
そして彼女は、生徒会の先頭に凛として君臨している。
彼女が現れるだけで、その場の空気が変わったかの様に、皆が静まり振り返る。同時に、微かな緊張感が漂う。
しかし、彼女が微笑むと、その緊張感も嘘の様に一気に溶けていく。
「か、会長…。お、おはようございます!」
一人の女生徒が、勇気を振り絞って彼女に挨拶をして来た。
すると彼女は、女生徒にふわりと微笑みかけ、その場の空気を柔らかいものへと変えた。
決して傲る事はない。生徒会長だからと言って威張る訳でも無い。かと言って、近寄りがたい人ではない。
「おはよう」
彼女の笑顔に、女生徒は顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。
初めて声を掛けたにも関わらず、彼女は笑顔で対応してくれた。そして、自分と同じ生き物とは思えない程の笑顔をくれた。
それが嬉しくて、そして同じ女に惚れそうになるくらい美しくて、女生徒は思わず視線を逸らしてしまったのだ。話し掛けて良かったと歓喜する。
男子生徒だけではなく、女子生徒からの憧れ、尊敬も厚い。
誰もが羨む。
誰もが憧れる。
誰もが虜になる。
そして、彼女に嵌って抜けられなくなってしまうんだ。
手が届かないと解っていても、声は確実に届くから。
しかし、彼女は神秘で、手を出してはいけないのではないか…なんて思ってしまう。
現に、声をかける際には勇気を振り絞らなくてはならない。
近寄りたいけど、そんな簡単には近寄れない。そんな雰囲気がある。そして、その雰囲気を作っているのは、彼女を取り囲んでいる面子の力が大きい。
何故か美形揃いの生徒会によって、話しかけてはいけないなんて雰囲気が作り出されていた。
いつも、取り巻きの様に彼女を守っている生徒会の所為で、近寄りがたいなんて思ってしまうのだろう。
しかし、彼女が一人の時は、気軽に声をかけられる。問題は、取り巻きの連中なんだ。
彼女が風紀委員会の存在に気付いて、委員長である雲雀に、笑顔で声をかけた。
「いつもご苦労様」
「……」
彼女の笑顔の言葉に、何故か雲雀は言葉を返さなかった。理由なんて解らない。
彼女に纏わりついている生徒会が気に入らないのか…。
それとも、誰にでも笑顔を振りまいている彼女が気に入らないのか…。
けれど彼女は気にする事なく、風紀委員の前を通り過ぎた。何も言わない雲雀の代わりに、副委員長の草壁が、一礼をする。
まるで、敬意を払っているかの様なお辞儀に、やはり、生徒会長は偉大なんだと思い知らされる。
風紀委員会が、唯一一目置いている存在。そして、全校生徒の憧れの的。
そんな彼女の背中を、雲雀は無表情で見つめていた。
「委員長」
「何」
少し不機嫌とも取れる様な、荒い口調で言葉を返す。そんな雲雀に臆する事もなく、草壁は言葉を続ける。
「そろそろ引き上げますか?会長もおいでになった事ですし」
「……そうだね」
しばらく考えてからそう一言返すと、雲雀は上着を翻し、愛しい校舎へと向かう。
問題のある生徒は正せた。だから、もう門に陣取っている必要はない。
それに、生徒会長は何時も、時間ギリギリにお見えになる。だから、生徒会長が見えてから引き上げても遅くはない。
それにどうせ、雲雀は校舎の巡回をして授業には出ない。遅刻の心配がない。
愛しい校舎に入り、まず向かう所はただ一つ。
何時もの、あの場所に雲雀は迷う事なく歩いていく─…
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