NO.6

□I’s ―僕等―
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第五話
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時は巡る。
例え太陽が沈もうとも、代わりに昇った月もまた沈もうとも、それを悲しむ必要はない。
夜空は白んで、闇を飾った星々が見えなくなる。つまりそれは朝の訪れ。
陽はまた昇る。変わらぬ姿のままそこに現れる。
世界を照らし、生命を育み、熱を与えて空を駆ける。
そしてまた地平線へと沈みゆく。再び暗闇、昇る月、輝く星々。
同じことを繰り返す。毎日、毎日。
もしも陽の沈む夜が死を連想させるというなら、陽の昇る朝は生を思わせるのだろう。
陽が昇ることは夜の終わり。
夜の終わりは朝の始まり。
始まる朝は夜を終わらせる。
夜が終わらなければ朝が始まることは出来ないから。

生きるということ、それはなんて罪深いのだろうかと、ふとそんな感傷に浸ってしまうことがある。
昨夜食べた干し肉は、いつまで生きて活動していた動物のものなのだろうか。
NO.6に居た頃で言うなら、ある朝食のベーコン、スクランブルエッグ、ある昼食のハンバーガー、ある夕食のステーキ。
そして植物も含めるならば、数え切れない野菜の数々。
其れ等総ての生命を、ぼくは貰って、そして今日までの生命を繋いできた。
何かの今を終わらせなければ、ぼくが今、生きていることは出来ない。
そのぼくもまた、いずれ訪れる死に向かって歩いている。
ぼくの今を終わらせることによって、始まるものとは何なのだろう。
その答えを知ることは決してないのだろうけれど、それがぼくの居ない世界の出来事であることだけは判る。

生。それは総ての始まりであり、今であり、そして総ての終わりでもある。
そんなフレーズがふと頭に浮かんで、なんて気取った言葉なのかと苦笑する。詩人にでもなったみたいだ。

生きる、死ぬ。
総ては繋がっている。
そして繰り返す。きっとそれは永遠に。





5.生きるということ
[それは総ての始まりであり、そして総ての終わりでもある]



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