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□school festival
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school festival










氷帝学園、体育祭。
其れはまだ日差しの厳しい10月に行われる。
翌月行われる文化祭と並んで、一大イベントのひとつでもある体育祭。
早いものでは約一月前から、それぞれの部門に基づき、生徒たち自身の手によって準備がなされる。
例えばチーム単位ならば、クラス単位で縦割りされた各チームの応援パネル作成、応援パフォーマンスの練習、其の衣装作りなど。そして此れら事前準備に加え、各役員や放送部員を中心とした当日の流れにおける総てを総括し、準備・運営を進めていくのが、氷帝学園生徒会なのである。
当然、総ての活動の中心人物はただひとりに定まる。
生徒会長、跡部景吾。
三日後に迫った体育祭の様々な準備に追われ、此処数日彼は朝練も含め部活に全く顔を出していない。

「もー…、何日会ってへんねん」

部活終了後。ロッカーの扉をばたりと閉めて、忍足は其の侭頭だけで扉に凭れる。
ぼこん、という薄い鉄板のへこむ鈍い音。
若干痛い、けれど金属の冷たさは部活後に火照った身体には丁度良かった。

「何ヘコんでんだよユーシ」

其処にひょい、と下から覗き込んできたのは向日だ。
嬉々として目を潤ませた忍足だが、

「がっくん…、聞いてくれる?」
「跡部に会えねぇとかいう話ならもう聞き飽きたぜ」
「…さよか」

容赦ない瞬時の一刀両断に、肩を落として長い長い溜息を吐いた。
向日は脱ぎ散らかしたウェアを纏めてぐるぐる丸めて鞄に押し込みながら、なんでだよと首を傾げる。

「別にいーじゃん、静かでさ。急に『テメェ等外周行ってこい!』とか言われねぇし。其れに…」
「其れに?」



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