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□child…?!
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…朝、か。
忍足侑士はうっすらと目を開け、室内が明るい事から、既に日は昇っているのだと気付く。
向かい合うようにして眠った昨夜。
そして胸元の辺りに、さらさらとしたあの鳶色の髪が広がっているのも判る。
(随分…可愛えとこで寝てくれてんなぁ…)
目を閉じてまだ夢の中に居る彼を眺めるのも好きだけれど、此れは此れ、何だか甘えられているようで嬉しくなってしまう。
耐えきれずに、忍足は腕に少し力を込める。
ぎゅ、と抱き締めれば、彼の薄い肩だとか、華奢な身体だとか、シャンプーの良い香りだとか、其れらを全て独り占めに出来たような気分になれる、筈だった。
(…ん?)
いつもより、多めに腕がまわる。
幾ら彼が細い方だといっても、こんな筈が無い。仮にも男子中学生、しかも14、5ともなれば。
何よりいつも抱き締めているのだから、感覚を違える筈も無い。
「…けぇご?」
下方を見遣る。
この位置からでは頭髪と脳天しか見えなくて、其の色味は間違いなく彼のもの。なのに。
なんとなく、ひとまわり程小さい気がするのは何故だろう。
そっと呼び掛けてみれば、ん、と小さく声が返る。
もぞ、と鳶色のカタマリが動き、彼は半分寝惚けた顔でこちらを見上げた。
「…おはよぉ…ゆうし」
「うんおはよぉ、…って、ええ?!」
うーん、と唸って再びシーツに顔を埋めてしまう跡部に、忍足は慌てて其の身体を起こす。
「ちょ、ちょお待って景ちゃん、起きて!」
「んー…?」
なんだようるせぇな。
そう言って身体を起こす彼の姿は、紛れも無く。
(なっ…何で?!)
child…?!
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