テニスの王子様のモノカキさんに30のお題

□気持ちいい事
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Pleasant sensation











「…っ、」

するり、と項を撫でる手付きに、跡部は息を詰めた。
恐る恐る、といった風に後ろの忍足を見やる。
「…忍足、」
「うん? 何?」
手を動かす事に神経を集中していたのか、忍足は跡部が其の名を呼んで初めて其の事に気付く。
「やっぱりやめ…、ッ」
不自然に言葉を途切れさせたのは、止まっていた指先がまた動きを開始した為。
「ええやんか。それに結構上手いんやろ? 俺」
「でも…っ」
「ええから。景吾は楽にしとって?」
「楽になんか…――ッ!」
出来る訳無い、そう言う為に開いた唇は其の侭に、空気を呑んだ白い喉が仰け反ってひゅッと音を立てた。



「景ちゃん」
「…ん、だよ」
喋りながらでも忍足の手は殆ど止まらなくて、だからこっちはまともに喋る事すら出来ない。
「痛かったら、言うてな?」
「もう、充分痛ぇんだよ…。バーカ」
「景ちゃんはガチガチすぎるからアカンねんて」
けれどその動きが不意に止まる。
「もうちょっと楽ーに出来ひん?」
「残念ながら出来ねぇな」
即答してやると、ほんなら…と考え込んだ忍足の口許が、跡部をもう一度視界に捉えたときふわりと弧を描く。
何か悪戯でも思い付いたかの様なその笑みに、余り良い予感はしない。



「其処…寝てくれる?」
ソファの上。今座っている其処の、クッションの有る側を頭にするように促されて、跡部は暫し躊躇する。
「ちょ、待っ……んッ」
制止を求めて振り向けばいきなり口吻けられ、同時に両方の手首を取られる。
ヤバイ、と思ったときには既に、体重を掛けられた身体はソファに沈んでいた。
「や…、忍足!」
「そんな心配せぇへんでも大丈夫やから。…あ、うつ伏せな?」
声を荒げるも、簡単に躱されてしまう。
けれどあの感覚を思い出せば、
「…ほら、」
眉根が寄ったのが自分でも判る。
なのに、抗えない。

「…ええ子やね」
忍足は笑って、さらさらと指の間を流れる跡部の細い髪に唇を寄せた。





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