テニスの王子様のモノカキさんに30のお題

□愛してるなんて言葉より…
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今日、行く。

そんな短いメールが彼から来たのは数時間前。
玄関に迎え入れた其の顔つきを見ただけで、何となく気付くものがある。
廊下を進み、リビングの床に鞄を放る仕草も、どことなく不機嫌。

「なんや、荒れてんなァ?」
「煩ェよ」

ぶっきらぼうに言い置いて、跡部はネクタイを弛めながらドサリとソファに腰掛けた。

「茶でも淹れよか?」
「いい。要らねぇ」
「そ。…で、何かあったん?」

いっそ短刀直入に聞いてみる。
床へ視線を落とした侭、跡部はほんの微か、眉根を寄せた。
けれど、其の目が此方を真っ直ぐ見上げる。
蒼の双眸に、射抜かれる。

「忍足」

空気を震わせ、声を発する、其の唇に目が奪われる。
名を呼んで相手を支配するとはよく言った事。
もう此方から視線を逸らすことは出来ない。


「今、俺が欲しいのは言葉なんかじゃねぇ。…判るだろ?」


短い問い掛けが総てを語る。
彼が今欲するものは、ありきたりな慰めや励ましや、そして陳腐な愛の囁きでさえもない。

愛してるなんて言葉より、もっと単純で簡単で偽りのないもの。

人間なんて、結局言葉に頼るしかない生き物だ。
でもときには言葉の無力を思い知る。
そして言葉は、ときに裏切り、ときに残酷。
限界、不信、其れは絶望にも等しい真実。

何もかもが嫌になって、上っ面だけの言葉より、もっと確かな何かを求めたがってる。

だけど其れはきっとみんな、同じなんだろう。
表すカタチが違うだけ。

だから跡部が手段を指定するなら、其れに応えるのが頼って貰った義務じゃないのか。

「…何や、よぅ知らんけど」

言いながら近付くとまるで強請るかのように顎を上げるから、滅多にない事に少し驚いて。
けれど、

「ほな、跡部が苛々してんのもみィんな忘れてまうくらい、ヨくしたるよ?」
「…言ってろ、馬鹿が」

いつものように悪態を吐きながらも、目を閉じてキスを受け入れた跡部は、やっぱりどこか安心したような。
そんな笑みを、微かに浮かべた気がした。





―了


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久々更新でよくわからないままおわる。(すみませ…)


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