テニスの王子様のモノカキさんに30のお題

□タイブレーク
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「入り込む、余地ないわ…」
忍足は、観客席のベンチで己の膝で頬杖を付き、そうしてラリーの切れ目。
視線を落とし、そしてそっと呟いた。


彼が、前々から此の試合を、青学の部長との対戦を楽しみにしていた事は良く判っていた。
けれど。

彼は、笑っていた。
ポイントが決まり、ボールが相手の手から宙へと舞うまで。
ポイントを決め、ラインからサーブの動作に入る直前まで。

きっと無意識なのだろうけれど。
彼は、笑っていた。


青学テニス部部長、手塚国光。
生半可な実力で勝てる相手では無いのは勿論の事。
其れは我がテニス部の部長である跡部にしても違いは無い。
互角。恐らく、力の差は無い。

もし、彼が負ければどうなるか。
其れは、今試合をしている彼自身が最も良く判っている筈だった。
此れ程までに、極限の状況下において。

其れでも、彼は。


「楽しそうな面しやがって。跡部の奴」
不意に、宍戸が笑って呟いた。
そう。無意識にでも笑みが零れる程、此の試合を、本当に楽しんでいる。


到底そんな事は出来ない。
現に、彼は試合が始まってから一度も此方を見る事なんて無い。

忍足は思う。
彼を、試合で楽しませる事が出来るなんて自分にはきっと不可能だと。




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