テニスの王子様のモノカキさんに30のお題

□間接
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間接



風呂上がりのお姫様はいつも水分をご所望です。


勝手知ったる他人の家、背後に聞こえる足音には迷いがなく、続くのは冷蔵庫の開閉音。
ラフな上下のウェアを身に付けて、タオルを首に掛けた侭。
ソファの隣に座った跡部の手には、半分残ったエビアンが1本。
あれ、と思ったときには既にボトルは傾いていて、冷たい水が見る間に体内に消えていく。

「…何見てンだよ」
「やー、間接チュウやんなぁ…と思て」
「はァ?」
「新しいのもう1本横に入れといたやろ?」

そう、確かに冷蔵庫には2本のボトルがあった筈。
跡部は今気付いたと言わんばかりにまじまじと飲み口を見詰め、間もなくフン、と鼻で笑った。
あぁもう其の確信めいた笑みは寧ろ犯罪じゃないか。

「今更だろ?」

跡部はそう言って残りを一気に飲み干していく。
上向いた喉のラインが綺麗だ、とか、喉仏が上下する其処はやっぱり目に毒だとか。
そんな感想は頭の隅に追い遣るとして、取り敢えず跡部がボトルを置いたら、間接じゃなく、直接のキスをしようと思う。
唇の柔らかさが少しだけ、いやかなり恋しくなったので。



―了



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