テニスの王子様のモノカキさんに30のお題

□居場所
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『なぁ、今のって』
『ああ、青学の』
『そういえばさ、手塚って…』
『…嘘、マジでかよ』
『本当らしいぜ、暫くは』
『オイオイ、其れって原因はやっぱり』
『あー』
『だよなー』

示し合わせた様に、苦笑が零れかけた、其のとき。

ひゅ、と空を切ったきいろいボールが、頭と頭の間を擦り抜けていく。
一瞬遅れて風が起こり、息を詰めた部員たちがびくりと身体を硬直させる。

「あー、悪ぃ悪ぃ。手元が狂っちまった」
「…っ、宍戸」
「無駄口叩く暇があったらさっさと練習した方が良いんじゃねぇの?」

「…でもよ、オマエだって知ってんだろ、宍戸」
数人居たうちのひとりが、負け惜しみの様に声を上げる。
同じコートに入った向日と、反対側に構える鳳とが、刹那表情を硬くした。
同様に、本当に僅かだが表情を厳しくした宍戸は、其れを感づかれる前に元に向き直る。

「…其れが、どうしたってんだ?」
「だから、」
「長太郎! 次打って来い! いくぞ向日」
「ッ、はい!」
「…了ー解」
遮る様に指示を出した宍戸は、元通りに努めた其の表情でもう一度だけ振り返って言った。
「さっさと退かねぇと、今度は当たっても知らねぇぜ?」





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