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□’08バレンタイン企画:跡部
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☆跡部
あんまりアイツが毎日毎日馬鹿な事を言うものだから、遂に俺も馬鹿になっちまったのかも知れない。
「なぁ景ちゃん…、バレンタインのチョコやけどな」
「あン? んなモン用意してる訳ねェだろ?」
さらりと返すと、忍足は「酷ッ…」と呟いて涙を拭う振りをした。
いつもの奴の詰まらない芝居。
だのに何度も何度も繰り返されれば、自然と顔が綻んでしまうのだから不思議なものだ。
「必要ねェだろ、そんなモン」
「…え?」
こんな台詞、言ったところで無駄にアイツを喜ばせるだけで、何も面白い事などないのだけれど。
「キスで、良いんだろ?」
たまには奴の趣向に合わせてやるのも悪くないかと、こんな譲歩の概念がいつ芽生えた事やら。
「景ちゃん…、」
忍足は信じられない、とでも言わんばかりの顔つきで、目をうるませて此方を向いた。
予想通りの展開に口角を上げた俺だったが、
「フッ、テメェの言いたい事なんざ…」
「どないしてん?! いきなりそんな事言い出すやなんて…あああ頭でも打ったんか?! 其れともまさか熱あるんちゃうか…?!」
続きの台詞は慌てふためく忍足と、額に伸ばされた奴の掌に見事に遮られた。
「……」
奇妙な空白、そしてプツン、と何かが切れて、一気にどうでも良くなってしまった。
「…もう良い」
「はい?」
「もう良いっつってんだ、此の馬鹿!!」
「え、ちょお待って、チュウは?!」
「んなモンやるか!!」
「そんなん…!」
「酷すぎるわ…!」と再び泣き伏す忍足。
もう知らねぇ。
知らねぇからな!!
end
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以前、メールにて配布させていただいたものです。
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