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□genius305感想
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沸き上がる歓声。
覚束ない足元。
まだ試合は終わっちゃいない。
見据えたコートが、ぐらり、揺らめいた。

まだだ。
此処で終わる訳にはいかない。

宙に投げ上げられたトスボール。

構えろ。
神経を研ぎ澄ませ。

視界が歪む。
壊れ掛けたテレビのように、灰色の砂嵐が画面を揺らす。

まだだ!
俺は…まだ、





…まだ、闘えるのに。











「! 跡部!!」
「跡部先輩!」

一瞬、途切れた視界。

そうだ、其れは本当に一瞬の事だと思っていた。

だが霞む目をゆっくりと開けて、其処にコートではなく何処かの天井が見える事に、眩暈にも似た感覚を味わう。
安っぽいホラー映画で使われがちな、瞬時に違う場所に飛ばされてしまった主人公のような不安定な感覚。
何にしても、気持ちの良いものではない。
其処が医務室か何処かなのだろうと見当が付くまでに、跡部は暫しの時間を要した。

「気が付いたか」

声のした方に視線を向けると、ベッドの隣で椅子にでも座っているのだろう榊の姿が視界に入る。

「…か、とく……ッ、」

起き上がりたい、けれどそんな体力は微塵も残っていなかった事を、跡部は今更ながら実感する。

「無理は、するな」
「……はい」

大人しく従う事にし、吐き出した息と共に、起き上がる為に込めた力を抜いた。
視線だけでゆっくりと室内を見回す。
やはり此処は医務室のようだ。
正レギュラーの面々、慈郎、滝。
各々が皆、其の表情を見れば大抵の事は察した。
枕に触れる感触で、短くなってしまった自分の髪の事も。

髪なんて、どうって事はない。
此れはそのうち戻るものだ。
だからどうでも良かった。

だが、試合は。
もう戻らない。


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