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□キミとの四季。
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ゆっくりと時間をかけ、高台へと上がる。
街の明かりが遠ざかり、静けさが辺りを包み始める。
深々と冷え込む空気が身に凍みて痛い位だったが、繋がれた手は其の侭だった。
高台の中腹、街を見渡せる場所に着き、思わず跡部は息を呑んだ。
家々の明かりだけではなく、全体が色とりどりのイルミネーションで覆われた街は、
「…綺麗、」
正直な感想が、口をついて出る。
「ガキん頃な、宝石箱みたいや、って思うた」
「はっ、今だってガキじゃねぇか」
さっきまでとは逆で、少しの時間でも待ちきれないという風に歩みを速めた跡部に、忍足は笑って、白い息と共に言葉を述べる。
其れに返された悪態と同時に流れた白い息は、彼の心中を表してでもいるかの様に弾んで見えた。
…否、そう見えただけの事だったのかもしれない。
(『今だってガキ』、か)
手を繋いだ侭。後に続いた忍足は、僅かながら表情を曇らせた。
足を休めようと、傍のベンチに腰を下ろした。
ふと上を見上げれば、
「…凄ぇ星」
「……うん」
街明かりに遮られていた星々が、此処でははっきりと其の姿を見せてくれていた。
じっと見詰めていると、其処に吸い込まれてしまいそうな眩暈すら覚え、跡部はゆっくりと瞼を閉じた。
「…そろそろやね。景ちゃん、あっち見てて?」
街を見下ろす向きに設置されているベンチの後ろ側、高台の頂上を見るよう促す。
「何だよ?」
「ええから。カウントダウンしよ。10、9、8」
笑って聞き返した跡部に、忍足も笑みを返して。
「「7、6、5、4、3、2、1、0」」
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