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□キミとの四季。
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この世をば
我が世とぞ思ふ
望月の

欠けたることも
なしと思えば


藤原道長






『仲秋の月夜』





今日、仲秋の名月やねんで?

知っとった? そう問えば、ソファの上、薄い洋書に目を通しながら隣に掛ける彼から、当たり前だろうと言わんばかりの怪訝な視線が向けられる。

「せやけど残念やわ、」



「お月さん、隠れてもうてる」

照明を落とした部屋の中から、カーテンを引いていない硝子戸、ベランダとを仕切る其れ越しに、灰雲に覆われた空を見て。

「見られんの恥ずかしいんやろか」

言って、細い肩へと腕を伸ばし、抱き込む様にして襟元から覗く白磁の首筋にそぅと口吻ける。

「…ッ馬鹿、止めっ」
「なん? 景吾も恥ずかしいん?」
「なっ…!」

言い返そうとしたのか、思い切り此方を向き直る彼の、唇を己の其れで刹那掠めて。

「此の侭ヤってもええの?」
「……ッ!」

耳元で低く呟けば、腕の中に有る華奢な身体がびくりと震えた。



「…冗談やて、」

明日学校やしな、と笑って、其の背を指先で軽くぽんぽんと叩くと、綺麗に歪められたのだろう口許から、小さく舌打ちが聞こえる。

「期待した?」
「するか。馬鹿」

胸元をぐいぐいと押し退けながら呟かれて、苦笑を漏らした。




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