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□キミとの四季。
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余りにも
早過ぎる、
刻(とき)の流れに。
僕は恋をして
だからこそきっと。
移っては代わりゆく其れが
哀しく、
愛おしく思えるのです。
『晩夏の刻、揺らめく』
「…、」
季節は既に残暑の頃。
ふたりで床に就いたのは夜半をとうにまわった時間で、普段ならこういう日は途中で目を醒ます事なんて無いに等しいのだが、今日はふと眠りから醒めてしまった。
「ゆぅ、し…?」
そして、隣に居た筈の男が何時の間にか居なくなっている事に気付く。
水でも飲みに行ったのだろうか。
そう思い目を閉じるも、一度気になってしまえば抑えるなんて不可能だった。
暗さに慣れない目を少し擦り、ベッドから降りると足に触れた自分のものらしきシャツを手に取り、素肌に纏う。
下着を拾い上げたところで後は良いかとズボンを諦め、寝室を出た。
すぅ、とリビングから流れて来る冷気。
扉の開いた隙間から流れ出る其れに一瞬身震いする。
扉をそぅと開ければ其れはリビング奥に続くベランダからのものだと判った。
其の硝子戸も同じ様に少しだけの隙間を作って。
開いていない方の其処に凭れる此の部屋の主人は、下半身にだけ服を纏い、此方に背を向けて座っていた。
「…侑士」
剥き出しの背が、適度な筋肉を備えた其れが、とても寒そうに見えて。
「寒くねぇのか?」
凭れ掛かっていない方の硝子戸を開けてそう問えば、
「景ちゃんこそ」
寒ないん? 此方に振り向き笑ってそう聞き返された。
「…そっち、行って良いか?」
「おいで? お姫さん」
手を伸べながら不意に呼ばれた名に、
「…っ馬鹿!」
「なぁんで赤くなるん?」
クスクスと笑いながらも、刹那宙を泳いだ跡部の右手を絡め取りゆっくりと引き寄せる。
ベランダに降りた瞬間、足の裏がひやりと冷たさを訴えた。
「くっついてた方が寒く無いやろ?」
不本意ながらも忍足の膝に腰を降ろさざるを得なかった跡部は、ふと指先に触れたコンクリートの床の冷たさに思わず手を引いた。
「其の侭座ったら景ちゃんめっちゃ寒そうやし」
言いながら、忍足は眼前の華奢な身体を後ろから抱き竦める。
そうして吐き出したふたつの息は、ほんの少しだけ白かった。
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