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□キミとの四季。
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暑い夏が始まり
そうして、終わる。






『夏の夜の戯れ』






「…な、花火せぇへん?」

其れは唐突な誘い。
手にした花火のパッケージを、手元で振りながら。

「…何で」
「何でって…、何で?」

其れはまるで、言葉遊びの様なやり取り。

「外、暑ィだろ?」
「もう夜やし涼しなっとるやろ」
「虫いるだろ?」
「蚊取り有るし」

そう言い渦巻いた深緑の物体をも取り出す。

「えぇやんかちょっと位…」

此の侭放っておいたらいじけかねない反応に、息を吐いた。

「……。其れ効かなかったら承知しねぇ」
「! えぇの?!」
「行かねぇとどっかの馬鹿が煩ぇからな」

手にしていた洋書を閉じ、ソファから腰を上げた。



夜の外は思ったよりも涼しくて、昼間の夏が何処かに追いやられてしまっていた。
少し歩いて河川敷に着くと、水流のさらさらとした音。
聴いているだけで、聴く者を落ち着かせる。
そんな効果でも有るとしか思えない程、夜の雑踏も何処か、遠い。


筒花火、手持ち花火、鼠花火。
もっと色々有ったけれど、片端から火を点けて、沢山の光の華が咲いた。

「キレー、やんなぁ」
「まぁ、そうだな」

呟いて、赤や橙や緑や黄の、飛沫を眺めた。

「後は…」
「最後は定番やろ?」

手にするのは、線香花火。





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