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□Let's speak English!
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窓際、一番後ろの席。
其処が跡部の席だった。
二学期に入って少しして、席替えをする羽目になって。
番号の書かれた籤(くじ)を引いて、黒板に名前を書き込んで。
移動も済んだしと席に着いたら、頭の上から嫌に聞き慣れた声がした。
『前後やし、宜しゅうな』
およそ他の人間からは聞き慣れない、イントネーションで。
『…あ?』
視線を上げれば、丁度前の席に、後ろ(此方)に向いて腰掛けた忍足が居た。
『ざけんな』
『嘘とちゃうって。黒板見てみ?』
言われ、不本意ながらも其方に目を遣れば、自らが書き込んだ其の真上。
見慣れた名前が、整った字体で。
『今日から楽しみやわ』
『…はっ、最悪だな』



そう、最悪……



「……景ちゃん?」
「……。んだよ」
にわかに教室内が騒がしくなり、とほぼ同時に忍足が身体ごと此方に振り向いていた。
「…話聞いとった?」
「全く」
即答した事に忍足は暫し面食らったかの様で、
「珍しい事も有るモンやな…」
「悪ぃかよ?」
「いいや?」
少し喧嘩腰で言えば、するりと躱されて、
「教科書46頁…此処を」
「前後でペア作って読めってんだろ」
言葉尻を奪えば、
「…やっぱ聞いとったん?」
「どうせ何時もと同じだろ」
少々驚いた様な表情、其れも種明かしをすれば直ぐに綻んで。
「そっか。…確かにな」

『Lesson15 会話表現  誘う』

タイトルを見、つまんねぇ用例。と跡部は肩で息を吐き、
「ほな、俺Aさんやるから」
「Bな」
受け答えをしながら、テキストを目で追いつつ軽く流れを確認する。
だが。


「Why don't you go to a movie?」




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