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□哀望
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嫌な、予感はしたのだ。
漸く治まっていたものが、不意に、目を覚ますかの様な。
哀望/1
世間は日曜日。
残り僅かとなった休日の宵の口。
今回彼は泊まりに来てはいなくて、久し振りに特に話し相手の居ない週末を送る事となった。
自らが呼吸をしたりだとか、そういう事さえしなければほぼ無音の世界が此の部屋には形成されている。
否、しないのでは無い。
「…っ、」
出来ない、のだ。
医者に行けば、原因は不明と言われた。
ストレスでは、とも言われた。
其れ等全て昔の事。
「は…、っ、」
息が出来ない。
力が入らない。
身体が、
ウゴカナイ。
何時しか発作は起きなくなって、
極たまに起きる事は有っても、其れは存外軽いもので。
そうしてもう、二度とこうなる事は無いと思っていた。
否。
そう錯覚、していた。
「けぇ、ご…ッ」
会いたいのに。
触れたいのに。
声が、聞きたいのに。
笑い掛けて、欲しいのに。
思って
想って
そうして自らの馬鹿さ加減に自嘲する。
何て自分勝手な考えだろうかと。
何て独りよがりな感情なのだろうかと。
焦がれる程の独占欲、とでも言うのだろうか。
此れ程までに何かに固執するなんて、以前の自分からすれば想像すら出来なかった。
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