NO.6
□’08バレンタイン企画:ネズミ
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☆ネズミ
「見て見てネズミ、貰っちゃった!」
満面の笑みを浮かべた紫苑の掌に乗っていたのは、いかにも「怪しいです!!」と書いてあるようなチョコレートの包みだった。
「…誰に?」
「ええと、帰りに市場で呼び止められて…、嗜好品ばかり扱ってる店のおじさんに」
…危険度200パーセント。
そんなものは手を付けないに越したことはない。
静止しようと口を開き掛けて、
「あ、あとイヌカシにも貰ったんだ。それから力河さんと…リコと…」
おれは溜め息を吐きながら目頭を押さえて俯いた。
コメカミも押さえたいくらいだ。頭痛がする…。
「陛下は…大層おモテになられるようで何より。ですが」
「どうかした?」
何も知らない顔で紫苑が下から覗き込んできた。
まったくこのお坊っちゃまときたら…!
「陛下は巷に流行する悪ぅいお薬などご存知ないでしょうけれど、どうか私の気苦労もお察し下さい?」
そう言いながら「怪しいです!!」の包みをひょいと取り上げた。
「あと、出来ればおっさんのも」
「無茶言うなよ」
地声に戻って手招きしたが、紫苑が笑いながら拒否した為に叶わない。…クソ。
こうなったら奥の手を使うしかないか。
「そんなもの必要ないだろう?」
微笑んで白い髪に触れると、紫苑は目を丸くして固まった。
「おれが、今からあんたにやるんだから」
…ちょっと待て、断じて告白とかじゃあないからな。
違うからな!!
end
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以前、メールにて配布させていただいたものです。