NO.6

□世話やき少年
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「紫苑…あんたまさか、雷」

が怖いとか言うんじゃないだろうな。

という続きは、鳴り響く轟音と紫苑の声とに殆ど掻き消されてしまった。

「無理! 無理だ!!」

雷に負けないくらいに絶叫した紫苑は、両耳を塞いでしゃがみ込んでしまう。

だが地下の「巣」はもう見えている。
雨も強くなってきたし、何にしても「巣」まで駆け込んでしまうに越したことはない。

「紫苑! 置いて行って欲しいのか?」

少々口調を強めて言うと、紫苑は今にも泣きそうな顔で、耳を塞いだまま中腰になる。
よろよろと歩き出すから背中を押して走るように促した。

別にネズミは雷など怖くはなかったし(勿論落雷の危険は避けるけれど)、小ネズミたちとて別段気にする方でもない。
しかし、このメンツで最も鈍感というか天然というか、
「雷? 好きだよ。ネズミはどうして雷はあんな大きな音がするのか知っている? あれはね…」
等々うんたらかんたら、にっこり笑って演説を始めそうな奴が、実はこんなにも雷が苦手だなんて。



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