NO.6

□もしもネズミがサンタだったら。
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本職は舞台俳優さ。
これは副業。ただの副業だ。
仕事の確実さと手際のよさには自信があるんだぜ。
だが今年は余分な仕事が一件増えちまった。
チッ、何だって紫苑のところなんかに…あー判った判った、行くよ。
ただし最後に回すからな。



「あ、お帰りネズミ!」

地下室の扉をそっと開けた途端、室内から明るい声が飛ぶ。
おれは一瞬耳を疑って、それから仕事に失敗してしまった事に気が付いた。
クソ、初めての失態だ。

「…あんた、何でまだ寝てないんだ」
「きみが帰るまで待っていたかったから。今日は遅かったね?」
「遅くなるから先に寝てろって言ったじゃないか…」
「いいんだ。ぼくが待っていたかったんだから」

いや、それじゃあ困るんだって。

おれは内心呟きながら、よろよろと後ろの本棚に手を突いた。
こいつの天然度を考慮していなかった。
起きて待ってるだなんて…有り得ない。

「…で、あんたは一体どんなプレゼントをお望みなんだ?」

おれは諦めて仕事を再開する。いやもうそれしかないだろ。
軽い頭痛を覚えながら問うと、天然坊やは期待と喜びに満ちた笑顔でこう言った。

「もちろん、きみの歌が聴きたい!」

「…それはそれは、お安いご用で」

そうだよな。
あんたは絶対、そう来ると思ってたんだよ…。
だから嫌だったんだ。
いつの間にか、あんたのペースになってるんだから。



―終わります

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何だか惚気?
天然は強しという事で。



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