NO.6

□世話やかれ少年
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空から轟音。
外は土砂降り。
体はずぶ濡れ。

地下へと繋がる階段部分へ駆け込んだ瞬間、後ろから紫苑にタックルされた。
なんとか転がり落ちることは免れたけれど、階段途中で座り込み、震える紫苑は何故か腕の中。

ま、そんな状態。





世話やかれ少年





「雷なんて怖くなくなる、とっておきの魔法を教えてやるよ」

耳元にそっと囁いた。
しかし右肩に押し付けられた頭は、かすかに横に振られる。

「なぜ」
「…知らなかったんだ」
「何を?」
「…雷がすぐ近くで鳴るのが、ぼくは苦手みたいだってこと、を」

言い終えるか否か、地を這う雷鳴。
紫苑が息を詰める感覚、びりびりと空気が振動する。

いつもの天然な物言いはどこへやら。
そう思うと、くすり、と笑みがこぼれる。

右手で背中を支え、濡れた白い髪を左の手ですいた。
普段のさらりとした手触りではなく、水を含み、指先を重く留める。


「それはそれは…初のご体験というわけ」

指先で、毛先をもてあそぶようにくるくると回す。
髪を伝った滴がひとつ、紫苑の肩に落ちた。



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