テニスの王子様のモノカキさんに30のお題

□居場所
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「…やぁ、忍足」
ふ、と視線を上げた少年は、歩いてきた黒髪の人影に気付き、ふっと笑って声を掛けた。
「不二。残念やけど、跡部は今日部活には出ん」
「…へぇ、どうして?」
漆黒の髪を風に揺らし、碧と白と黒のレギュラーウェアに身を包んだ少年、忍足は、青春学園の制服に身を包んだ少年、不二をゆっくりと見据えた。
其の肩までの茶髪も、風に、揺れる。
人当たりの良さそうな微笑み、いつもは弧を描く瞼から、感じられる強い視線。
気圧されるまいと、忍足は再び其の目を見据える。
「生徒会や。会長さんやからな」
「…あぁ、そうなんだ」
刹那、火花が散るなら散っていたかもしれない。
だが不二は直ぐさま視線を外し、笑んでみせた。
「残念だな、是非話がしたかったんだけど」
「伝えとくくらいはするで」
社交辞令で持ち出した提案は、遠慮しとくよ、とやんわりと拒絶される。

「…ん? あれ、跡部じゃないかな?」
「…ッな…?!」
指差す方向を振り返れば、見慣れた姿。
何故。
「やぁ跡部。こんにちは」
「? …! 不二じゃねぇか」
顔を上げた刹那、息を呑んだのがはっきりと見てとれる。
「生徒会は良いの?」
「…あぁ、意外と早く片付いたんでな」
来るな、来ちゃいけない。
「キミと、話がしたいんだけど」
「…判った」
駄目だ…!

「……忍足、」
「…ッ、なに?」
突然、其の跡部に話し掛けられて、心臓が跳ね上がる様だった。
「応対ご苦労だったな。練習戻ってろ」
見据えられた瞳は、僅かにくすんだ、蒼。
「せやけど…っ、跡部、」
思わず叫ぶ様に言う。
一瞬、僅かに歪んだ表情、つられる様に正面の綺麗な顔も歪んで、けれど直ぐに、平常に戻される。
「…俺は、大丈夫だ。…練習戻れ」
鞄頼む、そう言い残して、数歩先で待つ不二を追い掛ける。
ずしりと掌に掛かる鞄の重さを感じた侭、視線が、追う。

「…ッ、」
視線、が。
かち合ったのは、今見送った其の人ではなく。
青学からの、突然の来訪者。
往生際が悪いよ?
そうとでも言いたげな、笑みを湛えて。










罪名(ざいめい)





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