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□What you want.
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何が、望みなのだろう。










What you want.










あれは、十日前。
10月、4日。

忍足は俺を、あのクソ寒い夜中の海に連れ出して。
月が綺麗だからだなんて、甘い言葉をほざいて。
そうして。

細い、シルバーの三日月を此の指にくれた。

朝が来ても、また夜になっても。
其れはずっと変わらない輝きを湛えた侭。


束の間の戯れなどでは無く、約束が欲しかった。
例え未来に意味など無くても。





アイツの誕生日は…明日。

俺には何が出来るだろう。

アイツの、欲しいものを。
アイツがそうしてくれた様に、俺は。







…はぁ。

ひとまず纏めたプリントを束の上に重ね、何処か物憂げに溜息を吐いた氷帝学園生徒会会長、跡部景吾を、向かいで同じ作業をしていた副会長、原田は不思議なものでも見たかの様に目を見開き、そうして声を掛けようとして止めた。
其れをしてみたところで、己など何の力にもなりはしない事は生徒会の運営上自ずと実感しているからだ。
だが今一度、今日何度目かの溜息を聞けば。
「…跡部?」
「……、あぁ、何だ?」
顔を上げ、普段と変わらぬ様子で応える跡部は、
「何か…有ったのか?」
「……。…いや、」
悪かったな。気にすんな、と。
一瞬の沈黙の後、彼は微笑ってそう答えた。
少し気に掛かったけれど、そう言われてしまっては仕方が無い。
だから、そうか、とだけ返して、そっと作業に戻る事にした。





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