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□想い事 3
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桜が散って、ツツジが終わり、
デイゴが落ちたら梅雨が来て、
夏に向かって雲が走り出す頃
慰霊の日がまたやって来る。

私がバレリーナを夢見て
沖縄を飛び出した95年、
糸満市に、戦没者の霊を慰める
“平和の礎”が建設された。
1931年の満州事変からの
10年戦争を含む、
1945年終決の太平洋戦争までの
戦没者の名前が刻まれた石が
所狭しと並ぶ
平和のテーマパークだ。
当時、輝かしい未来を夢見て
舟を漕ぎ出した若者が
そんな場所に
心惹かれるはずがなかった。
アメリカを否定しながら
アメリカに憧れる大人達にも
気付いていた。
ひめゆりの塔にも
島中に残るガマ(防空壕)にも
ありきたりな平和への祈りにも
もう、お腹は一杯だった。

あれから12年。
そんな私にも
平和の礎を訪れる日がきた。
観光バスが連なる入口では
おばぁたちが待ち構えていて
供え物の花を売りつけてくる。
私は花を買わなかった。
私は観光客じゃない。
平和のモニュメントに
観光立県沖縄なんか
見たくなかった。

野に咲く花を摘むことが
許されないぐらい
完璧に整備された施設内で、
今も増え続ける戦没者の名前を
見て歩いた。
過去を忘れず、未来へ生かす為に
私達はきっとこういう場所を
求めるのだと想う。

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