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□想い事 6
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  〜花から花へ〜


ライブの日の楽屋には
たくさんのお花が届けられます。

そのひとつひとつを解いて
お部屋いっぱいに飾るのが
その夜の醍醐味です。

花束を頂くことで
私はその贈り主を知ります。

花同士が丁寧に
やさしく束ねられていること、
花を長持ちさせるための
科学物質が付いていないこと、
もしも自分がお花だったら
嫌だなと想うことを
強いられていないこと。


海を見渡す丘の上に
暮らしていた頃、
朝焼けの海に背中を押されて
ぽんぽんと咲く
庭のバラを数えるのが
とても好きでした。

一重平咲きの淡い桃色のバラ
その蕾はまるで宝石のよう。

そしてある日
初めてのカクテルが咲いた朝
たったひとつのバラの香りで
小さなお庭は甘美のガーデンへ。

バラが好きだと言うと
よくドラマで見かけるような
あの赤いハイブリッド・ティーの
モダンローズと思われがちですが
私が想いを寄せるのは
冷蔵庫へ押し込まれることも
拒むような野生のバラたち。

焦げるような沖縄の空へと
ゆらりゆらりと立ち向かい
乱暴に咲くノバラ。
熱帯植物と見まがう逞しさ。

           
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