SS

□膝枕
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「前から言おうと思ってた事があるんですけど」

「何だ?」

「隊長、ウザいです」

「うざ…」


どうやらその言葉の刄は、見事に彼の心臓を直撃したらしい。
その証拠に、シンの髪を撫でていた手がぴくりと止まった。
じりじりと感じる視線に、何か無言で訴えられている気もするが、あえて無視すると
シンは読んでいた雑誌へと目を移す。

暫らくの沈黙

上を見上げて雑誌を読んでいた所為か、いいかげん手が痺れてきて
ごろんと横を向くと、固めの枕が僅かに動いた。
再び溜息が漏れる。

「隊長、本当ウザいですよ」

「……何もしてないだろ」

抗議の声は勿論無視。
きっと彼は今頃、困ったように眉をひそめて俺の横顔を見つめているのだろう

再び溜息を一つ。

「だからウザいんですってば」

「…………」

頭がどうにも安定しなくて、再び上を見上げる形で頭を固定すると、そのまま見ていた雑誌を顔の上へ被せた。

「触るならもっと堂々と触って下さいよ」

そんな恐る恐る撫でられたら、逆に気になるじゃないですか

と、呟くと
固い枕がようやく動いた。

「…シン?」

「俺、少し寝るんで30分経ったら起こして下さい」

「……膝が痺れるんだが」

不服そうに呟く声をやっぱり無視して、両手をお腹の上に乗せ寝る体勢を整える。
その後も何やら呟いていたが、微睡みかけている俺の耳にはもはや子守歌にしか聞こえなくて
やさしく頭皮を撫でられる感触のくすぐったさに、シンは大きな欠伸を一つ洩らした。







end


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