隔離文

□耳鳴り
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初期の頃に書いたレイシン。
正真正銘これがレイシン第1作目です。

※一応、血とかそれなりのシーンとかがあるので、苦手な方は注意して下さい。
せいぜい16禁程度ですが。

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欠片が零れ落ちる

さらさらと

紅い鮮血を纏い

隙間から零れ落ちる








―…


微かな

高い






「……」

虚空を仰ぎ見たまま、シンはふと歩みを止めた。
偽りの蒼穹は何処までも続き、時折吹く風が肌を掠める。
天高く聳え立つ建物に囲まれ
思わず足を止めた刹那
溢れる雑音が一瞬にして脳内から消えた。

「……?」


―…

小さな音が

鼓膜に響く

それは

意識するにはあまりに小さな…


「シン」

「…っ」

一瞬にして世界が騒めいた。
雑踏の中
シンの立ち止まった場所から、やや前方を歩いていたレイが、人の波を掻き分け戻ってきた。

「どうした」

私服で街中に溶け込むように不自然に佇む二人を中心に、流れる波が分かれていく。


―…


また


「音が…」

「…音?」

音源を探すかのように、きょろきょろと視線を彷徨わせるシンに、レイは不審そうに眉を潜めた。
街中の雑踏は煩い位に音が無造作に溢れ返っていて、煩わしい位の不快感を煽っている中、特定の音を聞き分ける等困難で
シンは虚空を見つめたままもう一度耳をすませた。
しかしその音が聞こえる事はなく

「…何でもない」

シンはゆっくりと足を動かすと、レイの隣に並んだ。
そして二人は何事もなかったかのように、人の波に溶け込むように歩き始めた。


―…


音が鳴る

途切れる事なく




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