隔離文

□無題
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※アルヴィンもだけど、ジュードの過去もなかなか妄想しがいがある設定だと萌えながら書いたけど、定番すぎて没。

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まただ。

情緒不安定なのか、身体機能に何か問題があるのか。
たまに、涙腺が壊れたんじゃないかというくらいに涙が止まらなくなる時がある。
そういえば、いつからなのだろう。
幼い頃から兆候はあった記憶がある。
やはりストレスが原因なのだろうか。
だとしたら、今感じているストレスとは何か。
指名手配されたからだろうか?
それとも、逃亡から始まった旅が気付けば世界規模の大事になったから?
ストレスと一言で言っても様々なものを内包しているのかもしれないそれは、気付かぬ内に少しずつ蓄積されていたのだろうか。
それにしても、早く涙を止めないと。
静寂に包まれた部屋に一人。
ベッドに腰かけたまま歪む視界で壁を見つめる。
目元を擦ることはしない。
そんなことで涙が止まる筈もなく無駄だからだ。
ただ、襟元が湿ることだけが気がかりで
今日中に止まればいいのだけど、もし明日の朝までこのまま止まらなければ、対処の仕様がない。
そうなったら、顔を洗った時に水で濡らしてしまったと誤魔化せばいいかな。
そもそも、明日の集合時間までに涙は止まるのだろうか?
もし、このまま止まらなかったらどうしよう。
はらはらと涙を流したまま、頭だけは冷静に考えている。
自らの気配しか存在していない空間。
それにしても
アルヴィンが出かけてて良かった。
出来ることなら誰にも見られたくない。
でも、もしバレるとしたら
彼になら構わないかもしれないとも思っていたりする。
彼の他には、あるいはミラか。
彼女はあの性格にあの存在だから別として、彼の場合どこか他人と線を引いているところがあるので、もし今の状況を見られたとしてもびっくりはするだろうが、追及やまして他人に吹聴なんてしないと思うから。
そして、慰めてもくれないだろう。
ただ、困惑したようなフリをして見ないフリをする。
だから、彼になら構わないと思ったのかもしれない。
踏み込んで欲しくない。
自分が弱いのがいけないのだ。
でも、もしみんなにバレたら親身になって解決法を探してくれるだろう。
ただ、涙が止まらないだけなのに。
むしろ、そうやって他のメンバーに気遣われるのもまたストレスになるのかもしれない。
そんなことを考えてしまう自分が嫌いだ。
みんないい人達ばかりで
それぞれ様々な理由や事情から一時的に一緒に行動しているメンバーだが、居心地がいい。
居心地がいいからストレスなんて感じていない……はずなのに
何で止まらないんだろう。
人は眠っている間にも、かなりの量の水分を発汗などで失うという。
もし、このまま朝まで涙が止まらなかったら。
どれほどの量の水分が流れ出ることになるのか。
さすがに途中で水分を取るべきだろうと頭のどこかで考えるが、止まらない涙のための水分補給とは些かおかしな話だとも思った。
ふと、空気が振動する微かな音を耳が拾う。
ゆっくりと開かれた扉。


「ん?まだ起きて…、…どうした?」


なんでいるんだろう。
ドアノブを回す音すら聞こえなかったということは、深夜ということで同室者に配慮してのことだろう。
突然の事態にびっくりしたものの表情には出なかったらしく、顔を覗きこんできた彼の表情が険しくなる。


「…それ、止まらないのか?」


そっと目元に触れる指先は夜気に晒されていた為か冷たい。
歪んだ視界で見上げた彼は無表情だった。
何となく居たたまれない気分になり、視線を下げる。
暫く黙って見下ろされている気配を頭頂部に感じていたが、その後無言で彼は離れていった。
着替えるためか浴室へ行くためか。
室内を、足音を忍ばせて歩く微かな音だけが耳に届く。
少し、ほっとした。
やはり、彼は知らないフリをしてくれるらしい。
その事に感謝をしつつ、せめて彼の睡眠の邪魔はしないようにしなければと思っていたのだが、その予想は冷やしたタオルが顔に当てられたことで外れる事となる。
一瞬、触れた何かとその冷たさからかぴくりと肩が揺れた。
その背中を手が支える。


「そのまま横になってろ」


目隠しされたままなので彼の表情は分からない。
きっと、さっきと同じように無表情だろう。
せめて渇いたタオルが良かったと言いたかったが、タオルの上から当てられた手に押されあっさりとシーツに倒れこんだ。
濡らされたタオルは自重によってぴたりと隙間なく顔に張りつき、その重みに自然と瞼が閉じる。
強制的に作られた暗闇に意識がふわふわとしてきた。
思っていた以上に眠かったのかもしれない。
涙にばかり意識が向いていたせいか、今更なことに気付く。
どこか遠くから聞こえた声に返事をする間もなく意識が沈んだ。
朝には、全て流れてしまえばいい。








end








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アルヴィンは自分の歪みに気付いてるけど、ジュードは歪みがあることすら気付いてないイメージがある。

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