隔離文
□無題
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※ロイクラ、フレユリ前提のユリ+クラ。
※ぐだぐだと長すぎてよく分からない話。
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「ったく、フレンのやつ…一度説教が始まったら切りがねぇな」
いつもの事ながら、げんなりする。
きっかけは思い出せない。
どうやら、ユーリにとっては些細な何事かが親友にとって我慢出来なかったらしく、つい5分程前まで船内の一室で正座をさせる位の勢いで猛然と怒っていた親友は、エステルの呼び出しにユーリを気にしつつもあっさりと退室していった。
それを見送ったユーリは、これ幸いと部屋から脱走。
とりあえず親友の怒りが治まるまで待とうと、逃亡中の身にも関わらず悠々とホールへと続く通路を歩いていた。
「……ん?あれは…」
前方に、この船では見慣れた…けれどもここの通路で会うには珍しい人物の姿を見かけて、ユーリは片手を上げて声をかけた。
「よぉ、クラトス」
「…ユーリか」
通路の途中で足を止め振り向くクラトス。
こちらの呼び掛けに足を止めたという事は急ぎの用事ではないのだろうと推測したユーリは、ゆっくりと近づいた。
「ここでアンタと会うなんて珍しいな」
「医務室に用事があってな」
「医務室?アンタが怪我なんて珍しいな」
この青年ほどの剣の腕なら、怪我なんて失態は滅多に侵さないだろうに。
そもそも、今日この青年は何か討伐関係の依頼を受けていただろうか?と考えていると、クラトスが何故か気まずそうに視線を外した。
「……怪我ではない」
思わず、では何の用だったのか。と追及しようかとも思ったが青年の顔を見てやめておいた。
もし仮に怪我をしていたのだとして、重傷ならば何かしら噂は立っているだろうし、クラトスの表情は別の意味がこめられている気がしたからだ。
もともとしつこく詮索するつもりもなかったので、この話題は打ち切ることにする。
「ふーん?ちなみに俺は逃亡中」
そう言って悪怯れもせずニヤリと笑ったユーリに、クラトスは何とも言えない複雑な表情を浮かべる事で返事を返した。
以前、似たような状況下で偶然会った時に少し話をした事があったので、多分その時の事を思い出して彼なりに事情を察したのだろう。
もしかしたら、彼の性格上部屋へ戻れと言われるのかもしれないな。と思いつつ彼の言葉を楽しげに待っていれば、まるで子供の駄々に付き合うのは疲れたという表情でため息をつかれた。
「……ホールにいると見つかるのではないか?」
「だから、甲板に行こうと思ってな」
予想と違う返答に肩透かしを食らいつつ目的地を告げると、何故か彼が躊躇うような素振りを見せたのでユーリは、おや?と首を傾げた。
「あー…もしかして、あんたも甲板に行くつもりだったとか?」
「……あぁ」
その言葉にユーリは暫し悩んだ。
ユーリの不在に気付いた彼が捜索するとしたら最後のほうになるだろうと思って選んだ場所だったが、一人でいる事が多い彼が行くのなら遠慮したほうがいいかもしれないと思ったからだ。
「……仕方ない、場所変えるか」
ユーリの目的は、あくまでフレンから一分一秒でも多く逃亡出来る場所を探すことであって、そういう意味では甲板に拘る理由がない。
なので、次の候補地だった展望台か、あえて誰かの部屋にでも行くかと考えていると訝しげな声に止められた。
「別に構わないが」
「……ん?」
「…お前も甲板に行きたいのだろう?」
そう聞き返されてユーリは言葉を濁した。
「……アンタがいいんなら」
「?甲板は私だけが使用する場所ではない。来ればいいのではないか?」
何を言っている、とでも言いたげな表情にユーリは苦笑した。
彼の事を考えて遠慮したのだが、どうやらこちらの配慮は全く伝わっていなかったようだ。
案外彼は、一人で行動したいからしているのではなく結果的に一人で行動しているだけなのかもしれない、と新たな発見をする。
これで更に遠慮したのでは彼に対して逆に失礼だろうと思ったユーリは頷いた。
「それもそうだな」
そして、そのまま二人は一緒に歩きだした。
ホールにいたアンジュと何人かの仲間に声をかけるついでに軽い口止めも頼みつつ、甲板へと続く扉を開く。
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