隔離文

□無題
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※昔、日記でちょこっと書いてた猫キラシンと飼い主アスランの話です。
※色々と直したいけど直せないままなので、中途半端で終わります。

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「……っ!」


陶器が割れた音が響く。
落とした食器の欠片が手首を掠め、途端に刺激された痛覚に床に膝をついたまま手で傷口を覆った。
ずきずきとした嫌な感覚に視線を向けると、裂けた布と同時に押さえた手の指の隙間から赤い液体が滴り落ちているのが目に入って、アスランは思わず表情を歪めた。


「アスランっ大丈夫!?痛い!?痛いっ!?」

「…何やってんだよ」


リビングのソファーで仲良く座ってTVを見ていたキラとシンが音を聞き付けて、心配そうに駆け寄ってくる。
泣きそうな不安そうな…そんな二匹の顔を見たアスランは、安心させるように笑みを向けた。


「大丈夫だ。でも、ここは危ないから離れて…」


そこまで口にしてから、シンの表情の変化に気付いた。


「………血…が…」


慌てて腕を見る。

まずい

アスランが再びシンへと顔を向けるのより一瞬早く、黒い姿が洗面所へと走り去った。


「っキラ!そこから動くなよ!」


アスランは近くにあったタオルで手首の傷を軽く止血すると、未だ破片が飛び散った床の近くで呆然とシンを見送っていたキラにそう叫び慌てて後を追った。


「シン!」


駆け込んだ洗面所。
洗濯機と壁の隙間に隠れるようにしている黒い姿を確認して、ゆっくりと近づく。


「……っ…に……めだ…」


こちらに背を向け、頭を隠すように手で抑えて震えながら蹲り頻りに何かを呟いているシン。
アスランは慎重に足を進めた。


「………シン…」


触れられる距離まで近づくとゆっくりとしゃがみこみ怪我を負ってないほうの腕を伸ばす。
そして、手が触れる刹那。


「…っ触るなぁっ!」

「……っ!」


伸ばした手の甲に一筋の赤い筋が走る。
アスランは一瞬、眉を潜めるがすぐにシンへと視線を戻した。
震える小さな姿。
シンの心には、今でも塞がらない大きな傷が血を流したまま存在している。
とある出来事が原因で人間不振になってしまったシン。
それでも今は、この家に連れてきた時と比べてかなり緩和されていると思っているのだが、所詮は傷口を絆創膏で覆って隠しているようなものだとも知っている。
きっと今も、傷口は癒えずに化膿したままなのだろう。
同情するのは簡単だ。
けれど
これは、シン自身の問題だから。
自分達は、これ以上化膿しないように…少しでも治るように手当てをし続ける事しか出来ない。
その事をもどかしく感じつつアスランは、今度は手を伸ばさずシンへと声をかけた。


「シン。ここは寒いからリビングにいこう」

「…っ早くあっちにいけ!」


頑なに拒絶する小さな姿。
その震える背中があまりにも小さく見えて、アスランは我慢出来ずに再度手を伸ばした。


「シン…一緒に行こう?」

「っ早くいけったら!」


震える体に触れた瞬間、ぴくりと反応したが振り払われなかった事に安堵したアスランは、すぐには体を持ち上げず労るように蹲る背中を優しく撫でた。


「……シン。キラも待ってるぞ」

「………」


ここは寒いだろ。ともう一度声をかけると、シンは無言だった。
それを了承と取ると、縮こまる体をそっと抱き上げる。
そのまま背中を宥めるように叩くと次第にシンの震えが止まった。
顔が見えないから分からないが、少し落ち着いたのか腕の中から、ごめん。と消えそうな声が聞こえたので、アスランは苦笑する。
返事変わりに頭をすこし乱暴に撫でてやると洗面所を後にした。


アスランがシンと一緒に戻ると、棒立ちだったキラが数分前と同じ態勢からぴくりとも動かずに固まっている姿が目に入った。
表情すら動いてないその様子に軽く吹き出しながら、俺はキラも避難させる為に手を伸ばした。








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シンとキラの過去設定は一応考えてたんですけど、表に出ないまま終わったなぁ。
こういうのも多分もう書かないです。
可愛い描写って難しい…。

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