隔離文

□無題
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※平日設定。

いつか出す筈が結局出せなかった二人。
中途半端。

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「こんにちはシン」

「こんにちわ、アスランっ!」


全く同じ声で全く同じ姿形なのに正反対の反応。
その二人の姿を視界に入れた瞬間、アスランの顔が盛大に引きつって歪んだのを俺は見逃さなかった。







とある日曜日の昼下り。

此処、ヒビキ宅のリビングにて
俺、シンと長兄アスランは何処となく微妙な空気が漂う中、ただただ黙ってソファーに座っていた。
目の前には眩しいピンク色の髪色の美少女が二人。

向かって左側の彼女の名前はラクス
その右側はミーア。
一卵性双生児というだけあってすぐには見分けがつかない位にそっくりなこの二人は、キラとアスランの友達だ。


「ところで…キラはどちらに?」

「今、カガリの家に用事があって行っています。あと一時間もすれば帰ってくるとは思いますが…」

「そうですか…」


ふわりと微笑む顔が可愛らしい。
思わず見惚れてしまう。
しかし、隣にいるアスランは固まったままだ。
もともとアスランとキラは、従姉妹のカガリ経由でラクス姉妹と知り合ったらしい。


「残念ね、ラクス」

「そうですわね」


遠くからだと特に外見で見分けるのが困難(いや、近くで見ても難しい)彼女達だが、実際に会って話してみると性格等が正反対だったりして各々に対しての印象が全く異なったりする。
その違いが二人を見分ける一つの方法だったりするのだが質の悪い事にこの二人、お互いの真似…というか模写が完璧に出来るのだ。


「シンも休みよね?今日は友達と遊びに行ったりしないの?」

「えーと…、家でのんびりしたい気分だったので…」


その所為で、初対面から暫くの間は彼女達の悪戯に何度も騙されてはからかわれていたが、最近微妙な雰囲気の違いから見分けがつくようになってきた。
と言っても、完璧に…とは残念ながら言えず、たまに間違えてしまったりするのだが、それでも以前と比べれば見分けがつくようになったほうだと言ってもいいと思う。
黙っていてもそっくりなのに、彼女達の場合は意図的にやっているのだから仕方ない。
ちなみにキラは、間違った事が一度もないんだとか。
以前、その方法をこっそり教えて貰おうと聞いた事があるのだが、曖昧にはぐらかされてしまった。
キラの事だから深い理由なんかなくて、第六感とかそんな感じだと思う。
逆にアスランは、全くダメで話にならないらしい。
しかも、それが彼女たちに弄られる原因だと当人が気付いていなかったりするから尚更不憫だ。


「アスラン?先程から震えているみたいですけれど…どこかお体の具合でも?」

「っ!?いぃええ!至って健康です!ご心配なくっ!」


……声が上擦ってるぞ。


「えー。アスランが病気なら、あたしが看病してあげるのにぃ…」

「結構ですっ!」

「遠慮はいりませんわよアスラン。キラとシンの事なら私にお任せ下さい」

「そして私がアスランの面倒を見るから大丈夫よ!」

「……いえ……本当に…結構ですから…」


何やら意味深な笑顔のラクスと、嬉々として身を乗り出しているミーアを前にアスランは涙目だ。
この二人…アスランとイザークをからかって遊ぶのが趣味らしい。
悪趣味…とは思っていても口にはしないけど。
言った瞬間に、矛先が俺へと向けられるから。
今現在、生け贄の如く弄られている兄へ同情と安堵の眼差しを向けつつ溜め息を吐く。



『『とにかく、早く帰ってきてくれキラ!』』



それはきっと、俺とアスランの共通の心の叫びだったに違いない。






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