隔離文

□無題
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書きたかったので書きました。
しかし、あまりに定番すぎる程に定番なネタなので、余所様との展開被りが気になり下書き段階で放置。
とりあえず箇条でも書けて満足しました。

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人が行き交う大きな街道。
一際目立つ集団の最後尾を青年は歩いていた。
端から見れば、集団の輪から外れている…または、集団とは無関係のような…そんな距離を保ちながら歩いている。
もう一人、青年の隣を歩いている少年。
少し腕を持ち上げれば触れてしまう程に近い距離を歩いているのだが気にする様子もなく、何やら考えこんでいるのか常になく大人しい。


「…似てないよなぁ」

「……どうしたのだ?」


かなり前から隣で唸っていたのは知っていた。
それに対して青年…クラトスは、気にしつつも特に声をかける事もなく黙って歩いていたのだが、突然独り言のようにぽつりと呟かれた言葉に、漸く少年の旋毛を見下ろした。


「んー?俺とアンタって似てないよなぁ…って」

「……」


何と返事をすればいいものか分からず黙って見下ろしていたのだが、それに対しての相槌を特に必要としていなかったのか少年…ロイドは、先程と同じようにまた唸り始めた。


「やっぱ、俺とクラトスって…似てないよな?」


しばらくした後、まるで確認するかのように上目遣いで探るようなよく分からない視線を向けてくる少年に、クラトスは戸惑いの表情を浮かべた。


「……お前は私よりもアンナに似ているのかもしれぬな」

「母さんに?…あー…、母さんか……」


歯切れの悪い言葉にクラトスは瞳を細める。


「……不服か?」


低い声音に、思わず漏れた言葉の意味を誤解された事に気付いたロイドは、慌てて顔を上げると手を振った。


「そうじゃなくて。…この前、先生とかジーニアス達にアンタと俺が似てるって言われたからさ…」


例えば、ちょっとした時の表情とか、顔のパーツ?でも俺…今まで自分がどんな表情してるかなんて、いちいち気にして見た事もなかったからさ
だって、今まで散々みんなに似てないって言われてきたんだぜ?


誤魔化しではなく、本心から不満そうに呟いているロイドに、クラトスは思案するように顎に手を当てた。


「…私も、ゼロスに言われた事があるな。だが、そもそも彼等は私とお前しか知らぬからな。比較のしようがないだろう」

「……あ。そっか」

俺だって母さんの事、朧気にしか覚えてないしな!


そう言って笑うロイドにクラトスは目を伏せた。
ロイドが母親の顔を覚えていないのは、元はと言えば原因は己にある。と、クラトスは思っている。
事実を知ったロイドからは、それは違う。と即座に否定されたのだが、それでもクラトスの心には一生悔いとして残るだろう。
むしろ、残って貰わないと困る。


「でも俺、アンタに似てるって言われて嬉しかったぜ?」


思考にはまっていたクラトスは、その言葉に視線をずらすと照れたように俯くロイドを凝視した。


「俺自身、親子なのにどこがアンタに似てるのか疑問だったからな。でも、周りから見れば、俺とアンタとの共通点が確かにあるってことだろ?」

「……そうだな」

「それが、嬉しいなって」

「……そうか」

「あぁ」


見上げてくる息子の眩しい笑顔につられてクラトスも頬を緩めた。


「あ。勿論、母さんと似てるのも嬉しいからな!」

「そうか…」


集団の最後尾で視線を合わせたまま笑いあう。

あの頃は、こんな日がくるとは夢にも思っていなかった。
クラトスは自然と緩む頬に任せ笑みを浮かべた。





「……それに、俺がクラトスに似てるって事は、将来クールになる可能性もあるって事だしな」

「……ロイド?」

「!?な…っ何でもねーよ!先に行くからなっ!」


そう言い残して前方の集団の後ろにいたゼロスの背中へ突進して行ったロイドを、クラトスは呆気に取られて見送る。
小さく呟かれた言葉を聞かれてないと思ったのか、誤魔化して笑った少年。
だが残念な事に、聴力の発達した天使には一言一句漏らす事なくはっきりと聞こえていた。


「……クール……それは、難しいかもしれぬな」


じゃれてるゼロスとロイドにコレットとジーニアスが笑い、リフィルが眉を潜めて諫めるタイミングを伺っている。
その後ろでプレセアとリーガルが振り向き立ち止まり、しいなが手招きしている。
その光景にクラトスは眩しそうに目を細めると、やや早めの速度で足を進めた。



end



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下書きのまま中身を補完していないので矛盾いっぱいですが、雰囲気で察して下さい。

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