隔離文
□無題
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※多分、種デスED後か現代パロ。
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「暇」
カチカチとキーボードを叩く音が室内に響く。
「暇」
黙々と画面に流れる文字を目で追いながら指を動かす。
「…暇」
「俺は暇じゃない」
己の作業のように、いつまでも続きそうなその言葉に仕方なく返事を返した。
それでも、手を休める事はない。
それにも構わず、声は更に続く。
「僕は暇」
そんなの知るか。という言葉は、紡がれる事なく飲み込まれた。
正直、それどころじゃない。
「…僕は、暇」
「はいはい。そうですね」
キラさんは暇なんですね。
少し低くなった声に、紙に目を移しながら半分適当に答えてやる。
その投げ遣りな言葉が癇に触ったのか、とうとう声の主は憤慨した。
「もうっ!アスラン聞いてる!?」
明らかに理不尽な、逆ギレ以外の何者でもないそれ。
何故、そこで俺が怒られるのか。
「……はぁ…。そんなに暇なら、ラクスかカガリの所へ行けばいいだろ」
少なくとも二人なら、キラを邪険に扱う事はしないだろう。
それ以前に今、自分はとてつもなく忙しいのだが。
誰かさんのお陰で。
一旦、指を止め、目と目の間の皮膚を摘み揉むように解しながら目蓋を閉じた。
暫しの休憩。
「………邪魔なんだ。アスラン」
「…は?」
「僕が邪魔なんだね!?」
確かに、こうして仕事の手を止めさせられてる事に関しては邪魔だろうな。
そう思うが、勿論、言葉には出さない。
閉じていた目蓋を上げると再び作業を再開した。
このままのペースなら、日が暮れるまでには終わるだろう。
漸く見えてきた終わりに、指の動きも心なしか滑らかになる。
「…そうだ。僕、今暇だからアスランの相談にのってあげる」
いや。特にないから
しかも、そんな片手間みたいな明らかに暇潰し的な相談は結構です。
「例えば、カガリとメイリンの三角関係に悩んでるとか………そうなの?アスラン!?」
「いや待て。お前が今言ったんだろ!?」
思わず人差し指が引きつった。
そんな俺の様子にも構わず、キラの声は一層低くなる。
「……もし、カガリに二股なんてしたら…………、どうなるか分かってるんだろうな…?」
…最近、思う事があるのだが…
キラ様、黒くないですか?
背中が薄ら寒い気がするのは気のせいではないだろう。
それ以前に、恋人のお前を差し置いてカガリとメイリンに二股とはどういう事だ。
それを言うなら、三股だろ?
………いや違う。
何を言ってるんだ俺。
キラ一筋に決まってるじゃないかっ!
最早、指は完全に止まっている。
「どうしたの?アスラン」
きっと、首を傾げているのだろう振り向かなくても分かるそんなキラの仕草に、俺は思わず振り向くと抱き締めた。
「わっ!?本当にどうしたの!?」
「……ん?キラに抱きつきたくなっただけ」
「…何それ」
漸く構って貰えた嬉しさもあるのだろう。
上機嫌にくすくすと笑っている。
背中に回される腕。
「……………でも」
ちくりと痛みが走る。
「さっき言った事は…忘れないでねアスラン」
…やっぱり、女帝と一緒だったのがまずかったようだ。
俺は、ただ黙って頷いておいた。
ぎりぎりと背中の…丁度心臓の辺りの皮膚に食い込む爪が痛かった訳ではない。
……断じて。
「ところで…仕事はいいの?」
「……!そうだ、忘れる所だった!…って…」
元はお前の仕事だろうっ!
「え。そうなの?」
「お前がっ!逃げるからだろうがっ!」
と、言うか…そもそも何で俺がこんなに必死になってやらなければいけないんだ。
睨み付ける俺に、キラはまるで逃避しているかのように、ふっと口の端を吊り上げた。
「人間って、追われると…条件反射で逃げたくなるものだよね…」
お前のは単に、面倒臭い事からの逃亡だ。
「時には、逃げる事も大事なんだよアスラン」
首を軽く振り、諭すように肩をぽんぽんと叩いてくるキラに、俺は半眼になった。
「…じゃぁ、俺も逃げていい訳だな?」
「君はダメ」
「……おい」
「だって…アスランがいないと、僕が逃げられないでしょ?」
にこりと微笑うキラに深々とため息。
それは、どっちの意味なんだ?
………はぁぁ。
「………とりあえず、これはお前がやれ。残りは俺が何とかするから」
その言葉にキラはきょとんとした後、嬉しそうに微笑んだ。
「えー。これもやってくれないの?」
「それは、俺よりお前のほうが早いだろ。…って、だから!元はと言えば、これは全部お前のだと…っ」
日はまだ沈まない。
end
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時間軸が分からない。
しかも、ED後ならキラはこんな子供じゃないと思うし。