隔離文
□無題
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何を血迷ったんだか、キラ拉致inミネルバではなく、シン拉致inアークエンジェル。笑
これ以上文章弄ると余計可笑しくなりそうだったので、このままUP。
ある意味、キャラ崩壊してます注意。
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『おいで』
薫り咲き誇る花畑の中。
こちらへ向けて、ふわりと微笑みながら伸ばされる手に
その綺麗な表情に思わず見とれた俺は
瞬間、脳内が彼でいっぱいになりながら酸欠のようにくらくらした頭で
それでも手を出せずに立ち尽くしていたが
『シン』
再度名前を呼ばれ、迷わずその細い手を取っていた。
それは運命の出会い―
「…んな訳ないだろっ!」
「?一人突っ込み?」
「違うっ!」
食堂っぽい部屋の中に二人。
一つのテーブルに向かい合い座る。
俺の目の前には不思議そうに首を傾げる青年。
いったい
これは
「どういうことなんだよ!?」
「野菜嫌いなの?」
「そうじゃなくてっ!」
だんっと目の前のテーブルを叩くと、向かい側で葉野菜を摘んだ箸を口に入れようとしていた青年がまた不思議そうに首を傾げた。
「あまり怒ると、何処かの誰かさんみたいに後退するよ?」
「誰かって誰だよ」
しかも何処が後退するんだ。
思わず聞き返した問いに、何故か生温い笑みを返された…って、そうじゃなくて!
「だからっ!何で俺は、この船にいるんだって聞いてるんだよ!」
確か今日は、補給の為に立ち寄っていた中立国で、必然的に出来た休暇の暇な時間を潰す為に街中を一人歩いていた。
暫く海沿いをぶらぶらしていたが、日差しが強かったのもあってかちょっと眩暈を感じて、運良くすぐ近くに見えた公園に入り木陰で休む事にしたのはいいんだけど、連日寝不足で疲れていたのも重なって気付いたら意識がなかった。
そして、次に目が覚めた時には公園でもミネルバでもなくアークエンジェルの一室のベッドで寝てた訳だ。
誰か俺に解りやすく説明してくれ
「何で…って…木の下で倒れている君を見かけて、顔を覗きこんだら真っ青だったから具合悪いのかなって思ってここに運んだんだけど」
「その場で起こしてくれればよかったのに」
「でも、何回揺り動かしても起きなかったから、熱中症かなと思って」
そういえば…昨日はどっかの隊長の所為で徹夜だったっけ
別に変な意味はない
あの人にしては珍しくヘマをして、その皺寄せがこちらにまで来ただけだ。
しかも、この国の季節が今は夏の所為か暑かった。
…ていうか、運ばれても起きない俺も俺だけどっ!
あぁ。レイに知られたら絶対バカにされる。
「結局は、ただの貧血だったみたいだけど。でも良かったよ。もう気持ち悪くない?」
「あ…はい」
心配そうに額にあてられる手。
ひんやりと冷たい手が心地いい。
まぁ…悪い人ではないだろう
点滴してもらった所為か、街中を歩いていた時に感じていた怠さがなくなって、かなり楽になったのも事実だ。
敵だという事を除けば
それにしても彼の様子をみる限り
まだ俺がザフト所属だという事には気付かれていないようだ。
とにかく、捕虜とかそういう扱いではないところをみると
民間人をやむを得ず保護したという所だろう。
最も、民間人を易々と艦内に入れてしまうのもどうかとは思うが
運はいい
現に今自分は、拘束はおろか見張りはこの青年一人で部屋に二人だけ。
しかも、武器すら携帯したまま
敵ながら、この警備態勢はどうなのかと真剣に考えてしまうが
いや
……………待てよ
もしかしたら、逃げられないという絶対の自信の表れなのだろうか?
罠があるとか?
実は監視されてるとか?
でも、この部屋の中を見る限り、ミネルバと造りは対して変わらないように見えるし、怪しいモノが設置されてる様子もない。
そして、部屋の外に不審な気配も感じない。
…………いざとなれば、無理矢理にでも突破すればいいか
とにかく、自分には好都合極まりない状況なのは確かだ。
それなら逃げるチャンスはたくさんある。
ここは幸い敵艦なのだから、多少壊したり殺傷しても構わないだろう。
……やっぱり…恩を仇で返すようで申し訳ないから、出来るだけ穏便に抜け出す方向で
…………よし。
そうと決まれば警備が手薄な今の内に
「美味しい?」
「………へ?」
腰を少し浮かした瞬間、タイミングを計っていたかのように話し掛けられて、思わず間抜けな声を出してしまった。
「その魚」
「………魚?」
青年は、にこにこと目の前のプレートに乗ってる皿の一つを指差す。
刺身が盛り付けられている皿に視線を落としつつ、とりあえず、一旦座りなおした。
「僕が採ってきたんだよ」
この刺身の事だろうか?
つか、採ってきたって
「……釣りですか?」
「ううん。素潜り」
「………………は?」
もしや槍!?
相変わらずにこにこと笑っている青年。
華奢そうな外見に整っている容姿からは、到底槍を片手に…なんて姿は結びつかなくて
というか今時、槍…銛ではなく槍…からかわれてるのか?
もしや、彼は華奢そうに見えて実は中身は筋肉ムキムキだったり!?
まさか、俺を拘束しないのはその筋肉でねじ伏せる自信の現れ…あるいは、槍を隠し持ってたりとかするのか!?
「僕、どちらかというと和食派なんだけど、たまに新鮮な魚が食べたくなるんだよね」
「……そう…ですか」
「もしかして、魚嫌いだった?」
「いいえ。…俺もたまに焼き魚が恋しくなる時があります」
言葉に詰まりつつ、とりあえず話を合わせる。
ここは一回、冷静になって次の機会を伺うべきか。
というか、それとは別に、目の前の青年の正体が気になる。
「船で移動してるから、地上に降りれる機会も限られてるし、ましてや都合よく港町に立ち寄れる保証もないからね」
「確かにそうですね」
目の前の青年にちらちらと視線を送りつつ、不自然にならないように改めて箸を手に取り刺身を摘む。
……まぁ食物に恨みはない
どちらにしても新鮮な魚に違いはない。
脱出するのは腹拵えをしてからでも遅くないだろう。
それから、何となく世間話なんかしている内に時間が大分過ぎていたようだ。
あらかた食べおわり、胃も満足したようで改めて目の前の青年を見ると、残り少ない食事に夢中なようでこちらを見ていない。
さっきから何度も見ているが、この青年に特別腕力があるようにも槍を隠し持っている感じにも見えない。
見た目で判断するなとはよく言われるが
さて、どうするべきか
懐にある銃をさりげなく確認する。
例え、相手が筋肉ムキムキでも、銃の弾が貫通しないという事はないだろう。
目の前の彼に怪我を負わせてしまうのには、少し抵抗があるが…仕方ない。
そうと決意すれば、今のう…
「そうだ。温泉入る?」
「……………温泉?」
懐かしい響きの言葉に再び中腰で固まる。
目の前の青年は、特に動く様子はなく、相変わらずの笑顔。
それよりも、魅力的な言葉が聞こえた気がして思わず耳を傾けてしまった。
「うん。この船に余ったスペース利用して作ったんだ」
戦艦に温泉って…一体この船は何なんだ!?…と思いながらも、温泉の言葉の響きに抗えず、再び着席。
敵艦調査も大事だよな。うん。
「厳密には、湧き出てる訳じゃないんだけどね」
でも温泉というからには広い規模のお風呂という事では?
それとも何か特別な湯でも?
「広いお風呂は気持ちいいよね」
という青年の言葉を聞く限り、どうやら前者のようだ。
広いお風呂なんて懐かしいな…。
「そうと決まったら行こう」
「ち…ちょっと!」
予想通りのようで予想外の力でもって引っ張られた俺は、蹉きつつも青年の背中を追う。
これは、ある意味拘束されたも同然な訳で。
でも実際は、拘束された訳ではない。
ま…まぁ…もう少しいても…いいかな…?
詳しく調査出来る機会があるなら、積極的に探ったほうがいいだろうし。
それに、逃げるチャンスならいっぱいあるのだから。
とか、呑気で矛盾した事を考えて自分自身を無理矢理納得させていた俺は、まんまと流されている事に気付かず、内心うきうきしながら青年の後を追っていった。
「あ。忘れてた。宜しくねシン」
「はい。………ん?」
あれ?俺いつ名前教えたっけ?
end
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キラはシンとわかってて,お持ち帰りしました。
むしろ拉致。笑