隔離文

□祝福讃歌
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死ネタ+泣ける文=失敗。のいい例文。
私には、こういうのは無理だと悟りました。

※死にネタ注意。
苦手な方は回避して下さい。

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『祝福』









最期は結構呆気ないもので

万物全てに平等に訪れるものだから

それは僕にも例外なく訪れるみたいで

その事実に

何だか嘲笑えたんだ










酷く衰弱した体躯


細くなる呼吸


襲う逃れられない眠気にうとうとしながら


四角い箱から見える蒼い空を


ぼんやりと眺めていた。







…何だかすごく疲れた








激しい運動をした訳でもないのに


全身を襲う鈍い倦怠感


それに加え極度の眠気


上げては意識が遠退くように下りる目蓋に


必至に抗った。




でも


この眠りに逆らう権利は僕にはない




…だって


人の命を奪って


生まれる時でさえ


数多の犠牲の元に“製造”されたバケモノに


生きる価値があるの?





ある訳がない






自然と込み上げてくる笑いに


口の端を上げようにも


そんな些細な力すらもうなくて


仕方がないから心の中で自嘲していると


捕まれたままの手が一際強く握られた。








「キラ…」








吐息を吐くように呟かれた音に


首をゆっくりと箱の反対側へ曲げる。


まるで祈るように両手を組み


真っすぐに向けられた碧の眸







「まだ寝る時間には早いよ?もっと話をしよう」








そう言って


泣きそうに歪められた顔







アスランは、その綺麗な碧瞳から透明な液体を流しながら


懇願するように囁いた。









何で泣いているんだろう



もう



君を苦しませなくていいのに



君を苦しませたくないのに


僕は、最期まで



君を苦しませる存在で有り続けるんだね







そう思うと


何だか少し哀しくなった。








「アスラン…おやすみのキスして…」








ふわふわと心地がよく


意識が朦朧としてきて


君の声すら聞こえなくなるのも時間の問題だろう







君のその声はすごく好きなのに


もう聞けなくなるなんて勿体ないな







「ま…だ、寝る時間じゃないだろ!?」







震える手に力を籠められた指先が


痛い位に冷たい手の平を掴む。



潤む碧瞳


聞こえる嗚咽








泣かないで?



泣かないでアスラン



僕は恐くないよ?



哀しくないよ?



ただ



君より…人より



それが訪れるのが、早いか遅いかというだけなんだからだから








「アスラン…お願い」







最期の我儘だから



もう君には我儘を言って困らせたりしないから





早くしないと





君の温もりすら分からなくなるから









……………だから、








「アスラン」








君の温もりを感じて眠りたい



そんなささやかなお願い位



叶えてくれてもいいでしょ?







狭くなる視界


揺れる景色


もう目蓋を持ち上げる力すら残っていないみたいで


君の…僕の大好きな顔を目蓋に焼き付ける








「キラ…?…っ!!」








ほら


早くアスラン


闇が迫ってるんだ








「……っ」

















目蓋を下ろしてから


数秒の間を置いて


触れる温もり


頬を伝う水滴


もう君の顔も声も


聞こえなくなっていたけれど


確かに


君の存在を感じる事が出来て


最期に残った感覚すら


次第に薄れていく






もう少し感じていたかったのに







でも最期に感じた温もりが

君の口唇だなんて





僕は本当、幸せだったよね?





幸せに決まってる





生まれる時に感じる事が出来なかったモノを



最期に感じる事が出来たのだから








急激に喪くなっていく意識








『また会えるよきっと…』







そう言って


泣きそうに笑ったアスランの顔が





暗闇の中一瞬



見えた気がした…。



















今度は


歪みのない世界で


平凡に普通の人生を歩みたいな






そして


もう一度


君に出会えたなら


今度こそは…………。








end









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