隔離文
□無題
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静寂が流れる。
点滴がもう少しで終わりそうだ。なんてぼんやりと見つめていると、同じく点滴の袋を見ていたキラがぽつりと呟いた。
「何か…前にもあったよね。こんな事…」
「……いつの話だ?」
「前は…今回程ひどくなかったけど…やっぱり君が、ザフトからこっちにくる時に…」
「……あぁ」
苦い思い出に自然と表情も曇る。
視線を向けるアスランに気付かないのか、キラは何処か虚ろな眼差しを斜め上のほうへ向けながら、独り言のように言葉を続けた。
「ホント…バカだよね君は」
「ばかって」
「しかもヘタレだし」
「それは関係ないだろ」
「いつも大怪我して」
「…悪かったな」
「いつもいつも…」
「…………キラ?」
「バカだよ……ホントに僕は…」
膝の上に置いた拳を握り締める。
こんな時すごく後悔する。
彼は強いから
でも頑なだから
滅多にないけど、彼が自分の力を必要としてくれるのなら、その時は必ず彼の為に動こうと決めていたのに…
でも、今回みたいな事があると
本当は、彼はとっくに助けを求めていて、自分はその小さなサインを見逃してたんじゃないかって
すごく後悔する。
「ごめんね、アスラン」
「…お前が謝る意味が、俺には理解出来ない」
視線を下ろせば、何処か怒っているアスランが睨み付けるように見上げていて、キラはただただ苦笑する。
「うん。ごめん」
「…だから、なん」
「それでもっ…」
それでも…僕は…
続く筈の言葉を視線で遮る。
自嘲に似た哀しい微笑を浮かべるキラを、アスランは暫らく睨み付けた後、瞳を閉じた。
「……バカだな」
俺も。ため息と共に吐き出し瞳を開けば
キラが、きょとんとした顔で見下ろしてくる。
そんな顔をして欲しい為に来たわけじゃないのに
そのあどけない…間抜けな顔に、アスランは笑みを浮かべた。
「悪いが、包帯を変えるの手伝ってくれるか?」
「………うん」
一度は別れて開いてしまった溝も、またこうして同じ道を選んだ事によって交じりあったのだから、少しずつでも埋めていけばいい。
「……ありがとう」
意味が伝わったのか
「どういたしまして」
返された言葉に、二人でまた笑みを浮かべた。
end
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当時、雑誌に書かれてた言葉に一喜一憂してた記憶があります。
次のページはおまけ。
当初は、途中からこんな展開にするつもりでした。的なやつです。
アスランの扱いが、あんまりな展開だったんで迷ったあげく没に。
雰囲気を壊したくない方は読まないほうが良いかと。