隔離文

□無題
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※運命本編中。アスランが戻ってきた辺り。

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エターナルの一室にある医務室。
ファイルの束を腕に抱えた青年は、扉を開けた瞬間驚いたように目を見開き、瞬きを繰り替えした。

「あれ?起きてたんだ」

「キラ!」

まだ寝ているのかと思っていたら、予想が外れたらしい。
現在ベッドの住人である彼‥アスランは、余程退屈していたのか入って来た青年の姿に気付いて、実に嬉しそうに笑みを浮かべた。

「もしかして、煩くて眠れなかった?」

色々、人数が増えてばたばたしてたから。と、申し訳なさそうに苦笑すると

「…むしろ、寝すぎた」

そう言って不貞腐れたように苦々しく眉を潜めるアスランに、青年…キラは抱えていた荷物をサイドテーブルに置くと、ベッド脇の椅子に腰かけた。
一応、二人部屋仕様のこの部屋には、本来なら彼の他にもう一人お客がいる筈なのだが、ちらりと横目で確認したベッドはもぬけの殻だった。
それには深く考えず、サイドテーブルにある造花の挿してある花瓶を見たキラは、思い出したように「あっ」と声を洩らした。

「さっき彼女…メイリンさんの所に様子見に行ってきたんだけど、元気そうだったよ?」

「そうか…」

気掛かりだったのか、アスランは、ほっと息をつく。

「でも、カガリが何だかはりきってて…」

張り切り過ぎないといいんだけど。そういって何処か困ったように微笑むキラに、彼の心配するその情景がアスランにも容易に想像出来てつられて苦笑いを零した。
ふと、サイドテーブルに置かれたファイルの束が視界に入る。

仕事の合間にきたのか

それとも休憩中なのか

そういえば、彼のここでの立場をまだ聞いていなかったような気がするが、忙しそうに駆け回っているのを見る限り、自分が思っている以上に彼は忙しい立場に身を置いているのだろう。

「傷…まだ痛む?」

ぼんやりと考えていたアスランは、小さく呟かれた声に視線を戻した。
キラは俯き、目線を若干落としている。
まるで、自分が怪我をしているのように表情を歪め、耐えるように口唇を噛み締めているキラにアスランは、ゆっくりと手を伸ばした。
噛み締め震える口唇に、そっと指を這わせる。
まるで泣きそうな瞳で見下ろしてきたキラに、アスランは柔らかく微笑んだ。

「見た目より、怪我はそんなにひどくはないんだ。だから、大丈…っ」

頭を撫でようと更に手を上げた瞬間、ずきりと痛みが腕の中心部を走る。
思わず、二の腕の辺りを掴み体をまるめると、キラが慌てて椅子から立ち上がって身を乗り出した。

「やっぱり無理してたじゃないかっ」

「……っ…もう、大丈夫だ…。少し痛みが走っただけだから…」

体を倒す際にも、それまで平気だった節々を動かした事で走る痛みに僅かに眉を潜めていると、キラは更に眉間の皺を深くする。
失敗したな。と思いつつ、ゆっくりと枕に頭を沈め漸く息を吐くと、キラも安心したようにほっと息をつき椅子に腰かけた。

「まったく。君は、すぐ無茶をするんだから」

「…お前にだけは言われたくな「僕が何だって?アスラン」

「………………いや…」

威圧すら感じる笑顔に、アスランは口の端を引きつらせる。

「ほら。大人しく寝てなって」

「…眠れない」

まるで駄々を捏ねる子供を諫めるような態度の親友に、何だか面白くなくて
ベッドの上から拗ねたように見上げるとキラは、しょうがないなぁ…と微笑を浮かべた。

「もう少しだけ、僕が話相手になってあげるから」

「…仕事はいいのか?」

「ん?君が気にすることじゃないから大丈夫」

大丈夫って……。

テーブルに詰まれたファイルにちらりと視線を向けるその視線に気付いたのかキラは、休憩中デス。とだけ言いこれ以上しゃべるなとばかりに、にこりと微笑んだ。
まさか、俺を口実にしたサボりじゃないだろうな。なんて一瞬考えたりもしたが
アスランは、それ以上言葉を口にはしなかった。



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