連載
□U
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「ごめん。遅くなった」
約束の時間から既に5分。
扉を開けると案の定、門壁に寄り掛かっているレイの後ろ姿が視界に入った。
慌てて駆け寄ると、お互い挨拶もそこそこに歩き始める。
今日もまた遅れてしまった…。
軽く自己嫌悪に陥りながら、ちらりと隣を伺うと
表情にこそ出さないけれど、そのいつもの無表情が何だか怒っているように思えて
一つ吐息をつく。
それにしても今日は暑い。
冷たい物が食べたいな…なんて
透き通る蒼い空を見上げながら歩いていると
「シン」
不意にレイの手が襟元に伸びてきた。
視界が蒼から金に変わり
伸びてくる手を、ぼーっとしながら見守っていると、開いたままのシャツの襟元を掴まれた。
「きちんと止めろ」
そういってボタンをはめようとする手に俺は我に返る。
「レイっ!」
眉の寄せられた顔を至近距離に見ながら襟元の手を外そうと手をかけた。
「いいんだって」
わざと外してあるんだから
それでも尚掴まれたままの襟首を俺は何とか解放させる。
「喉が苦しいんだよ」
「慣れれば苦しくない」
空気を送り込むように再び寛げさせる俺の襟元を、レイは未練がましく見つめていた。
そう言う彼の襟元はきっちりと止められている。
ついでにネクタイまできっちりと首元で
これだから優等生は…と内心呟きながら、ずり下がりかけた鞄を肩にかけ直すと、横顔を盗み見た。
俺の黒とは違うさらさらの金髪が歩く度に、ふわりと揺れる。