隔離文2
□無題
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※続きを思い出せない。
※なので、中途半端で未完成です。
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「はっぴーばれんたいん、ふぉーゆー!」
「痛っ!?」
楽しそうな声が背後から聞こえたと思ったら、頭や体に何かが当たった。
慌てて振り向けば、リズム良く何かを投げつけてくる幼なじみの姿。
とりあえず、先程から絶えずぶつかってくるものから顔を守るために手で遮りつつ床へと目を落とせば、散らばっている豆とよく分からないもの。
…チョコの包み紙だろうか…?
そこで、ふと先程のキラのかけ声を思い出した。
「…いやいやおかしい、何か混ざってるよな!?」
リズム良く繰り返される動作に、やめろ!と再度手で制すれば、キラは投げる直前の体勢のまま素直に動きを止めた。
「まだ始まったばかりなのに…」
「何が始まったんだ」
「バレンタイン&豆まき」
「なぜ混ぜた」
「特にこれといって意味はないけれど、同じ月だしまとめて片付けてしまおうかな…なんて」
そう言って、えい!と手に握ったままだった豆と包み紙を懲りずに投げてきた。
「だからそれ、地味に痛いからやめろ!」
本気で嫌がっているのが分かったのか、キラがようやく手を下ろす。
「まず、経緯を説明しろ」
「だから、バレンタインと豆まきを同時に開催しようかと」
「節分から二週間後にか。…ただ、豆まきを忘れてただけじゃないのか?」
「違うよ!今日のために楽しみを取っておいたの!」
あくまで認めない、その往生際の悪さにため息が出てしまうのは仕方のない事だろう。
「…まぁ、そういうことにしておいてあげるよ」
「なにその上から目線」
頬を膨らませた幼い仕草で、拗ねたことをアピールしてくるキラ。
「でもこれだと、豆まき要素がただ投げてる行為だけになるのが難点なんだよね」
「むしろ、福を投げてる気分にはならないのか?」
「投げてるんじゃなくて、ばらまいてるって思えばいいじゃないか。それよりも、アスランが鬼のお面を被っていないのが一番ダメなんだと思う」
「無理矢理ねじ込んできたな」
むしろ、多分、本題はソコなのだろう。
だがしかし
その手には乗らない。
「そもそもお前は、チョコで厄払いしたいのか俺にあげたいのか、どっちだ?」
「もちろん、あげたいし投げたい」
「どちらかにしろ」
えー、と不満そうにブーイングする。
行事を混ぜる事は百歩譲っていいとして、チョコを投げるという行為はもらう側としては複雑だからやめて欲しいと思うのは、至って普通の感覚だと思うのだが?
「そんな時のシン君です」
「どんな時!?」
突然の話題転換と登場に思わず突っ込めば、いつのまにか扉の側に後輩が立っていた。
が、どこか遠い目をしている。
…気のせいか、最近シンに会うたびにこんな感じの表情ばかり見る気がするのだが。
「僕はバレンタイン。彼は豆まき担当って事で話はついているから」
ね?と首を傾けるキラ。
諦めたように目を伏せるシン。
「…ん?と、いうことは…シンが豆まきをして、お前は普通にチョコを渡すという事か?」
珍しい。
キラの事だから、その2択なら豆まきのほうを選ぶと思っていたのだが…もしや照れ隠しだろうか?
「え?何いってるの?投げるよ僕も」
「お前こそ何を言っている!?」
そういう理由なら、まぁ、チョコを投げられるのも吝かではない…なんて思っていたら、呆れた表情のキラに一刀両断された。
「結局お前は、投げたいだけだよな!?」
「ほら。一石二鳥」
そんな、お得でしょ?みたいな顔されても、こっちが困る。
とにかく、この幼なじみはどうあっても今日この場でバレンタインと豆まきを同時に済ませてしまいたいらしい。
「そんな時のシン君です」
「だから、どんな時だ!?」
「…………」
「…………」
「…嫌なら嫌だと断っていいんだぞ」
「…俺が…何も言ってないと思いますか…?」
「…そうだな。念のため聞いてみただけだ…」
思わず目頭を抑える。
「まぁまぁ、みんな落ち着け。誰かが犠牲になる、それが豆まきだろ?」
「バレンタイン要素は何処にいった!?」
またいつのまにか登場人物が増えていた。
いつからいたのか、背後の窓際で腕を組み頷いているカガリ。
「カガリは鬼役誰がいい?やっぱりアスラン一択だよね?」
「またその話か」
「鬼役?私は、キラでもシンでもアスランでも誰でも構わないが…」
「そうだよね。アスランしかいないよね」
「当然の帰結ですよねー」
「話噛み合ってないし、お前もちゃっかり便乗するな」
「いたっ!?何で俺だけ!?」
ここぞとばかりに矛先を向けてくるシンの頭を叩く。
きっと、キラに押しつけられた役割をこちらへ投げたいに違いない。
そんな会話をどう理解したのか、カガリが何度か頷き声高々に宣言した。
「…仕方がない。私が犠牲になろう!チョコでも豆でもかかってこい、お前ら!」
ふはは!と悪役さながら笑う姿はとても楽しそうだが…彼女はきっと趣旨を理解しているようでしていない。
どうするか。と考えていると控えめにシンが異議を唱えた。
「…そういう訳にはいかないんで、代わりに俺が犠牲になります」
不満そうな声ではあったが、内容としてはカガリに対して気遣いを見せたシンに感激して思わず振り向けば、…ある意味声音と同じように虚ろな表情と目。
そっとキラへと視線を移せば何やら首を傾げていて、再び視線を戻せばシンがゆっくりと首を振った。
「ここまでが台本です」
「どこから!?」
筋書ははたしてキラなのかカガリなのか。
「結局、鬼役はアスランが適役って事かな」
「お前は本当にブレないな!?」
「正直、誰でもいいですよ…マジで…早く終わるなら…どうせ無駄な足掻きになるんだから…」
「諦めるなシン!…って、そうだよ!キラがやればいいじゃないか」
最初にこの企画を立案した責任者がやるべきだ。と主張すれば、とても嫌そうな表情を返された。
「えー…、…そうだなぁ…。フリーダム使っていいならいいよ」
「どういう理由での使用許可だ!?」
豆まきやるために機体を動かすと説明するつもりか!?
「分かったぞ!いかに豆をたくさん弾くかを競う訳だな!?」
「お前はまた何の話をしている!?」
何をどう解釈したのかカガリが嬉々として話に乗ってくる。
「違うよカガリ。いかに豆を弾きつつチョコを落とさずキャッチできるかを競うんだよ」
「地味に難易度上げてきたな!?」
「もうめんどくさいんで、全て弾くって事でいいじゃないですか…」
それで、弾かれた豆の中に何故か実弾が交じってたりして、うっかり流れ弾に当たったりとかしねぇかな…、なんて物騒な願望を呟き出したシンに頬が引きつる。
それは、故意に実弾を混ぜないと起こらない事故だからな?
「もう、投げるのもめんどくさくなってきたから…投げたって事で豆を食べない?」
「そこは一番省略しちゃマズイ点だろう」
「豆って、どのくらいの速さがあれば機体貫通しますかね?」
「安心しろ。お前は絶対に参加させない」
何でですか。後輩イジメですか。と睨んでくるシン。
気付けば双子は姿を消していて、慌ててシンの手首を掴むと外へと駆け出した。
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