隔離文2

□無題
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※よく分からない話。
※致命的ミスもしてますが、直そうにも直せないんでスルーして下さい。

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研究所の敷地内にある開発棟の廊下。
その、とある一室の前にルドガーは立っていた。
軽く息を吐き目の前の扉をノックするが返事がない。
いつものことにルドガーの口から再度ため息が零れた。
こういうことはたまにある事で、これから面会予定の人…部屋の主は、何かに没頭していると返答がないのだ。
そういう時は色んな意味で確認をするために開けてもいい…と、本人から了承はもらっているのでルドガーは遠慮なく開ける事にした。
ドアノブに手を伸ばす。
念のため武器を確認し、ゆっくりと手首を動かせば何の抵抗もなくノブは回った。
鍵すらかかっていない扉に一度動きを止め、音をたてないように気を付けながら慎重に扉を押していく。
隙間から見えた室内の正面に、すぐ部屋の主を発見するが特に変わった様子は見られない。
更に扉を開け視線を動かすが、部屋の中もまた同様に変わった様子がない事を確認して、ルドガーは武器から手を離した。


「…ジュード?」


声をかけるが返事はない。
ジュードは先程と変わらず、乱雑に本や道具が積み上げられた隙間にある机の椅子に腰掛け、その耳にイヤホンをつけて本を読んでいた。
今まで見たことのないその珍しい光景に、ルドガーは首をかしげる。
基本的に机で作業している時の彼は、極力雑音を入れないようにしている。
ということは
読んでる本は医学書ではないのかもしれない。
そもそも、今まで音楽を聞きながら本を読んでいるのを見たことがなかった。
もしかしたら音楽ではなく、雑音を消す何とかキャンセラーなのかもしれない…と一瞬考えたが、多分違うだろう。
彼が、もし何か異変があったときに真っ先に察知するであろう五感を、わざわざ使えない状態にするなんて考えられないからだ。
そういう意味でも珍しい。
しばらく立ってみるが気付かない。
何故かこちらが気まずくなったので、とりあえず部屋に入る事にした。
いや。気付いてもらいたいのだから、この場合は堂々と音をたてて声をかけて入るのが正しいのかもしれないが。
そうして改めてジュードへと視線を向ければ、先程は気付かなかったがこれまた珍しいものを見た。
眼鏡だ。
イヤホン程ではないが、あまり見る機会の少ない光景。
基本的に戦闘中や街中で会う時は眼鏡をかけていない。
もっとも、逆にヘリオボーグで会う時は高確率でかけているのだが。
そういえば、ここにはクエストのお誘いにきたのだが…、急用ではないので邪魔をしないことにした。
とりあえず、隅のほうに申し訳程度に片付けてある簡易的な接客スペースへと足を向ける。
ソファーへと座りジュードを見れば、いつのまか手にしていたカップを傾けていた。
喉を嚥下した様子が見えないので、中の液体を飲み干していたらしい。
にも関わらず、何も違和感を感じなかったのか空のカップを元の位置に戻すジュードに苦笑した。
そして少し考え立ち上がると、ジュードへと近づき机の上に置かれたカップを手にとった。
念のためしばらくその場に立ってみるが、眼下のジュードは反応しない。
多分視界に入っているとは思うのだが、意識が余所に向けられているせいか全く気付かれない。
諦めて部屋の入口側にある小さな簡易キッチンへと歩き、定位置に置いてあるコーヒーメーカーにセットした。
隣の棚にはコーヒーの他に紅茶やココアもある。
豆だけはジュードが定期的に補充しているようだが、紅茶に関してはローエンだろう。
ココアはエリーゼだろうか?…いや、案外アルヴィンかもしれない。
そんな事を考えながら視線を下げる。
棚の端の一番下には少量の缶に入った菓子がある。
客人用かジュードの小腹用か迷うところだが、とりあえずコーヒーの袋を手に取った。
袋の開封口から中を覗き、豆が挽いた状態であるのを確認してから取り出す。
次いでお湯は…と探すとポットがあった。
試しに少し流し台に出してみると湯気が確認できたので、事前に沸かしていたのかもしれない。
少し横着する事にはなるが、沸騰しているよりはいいだろう。と、ありがたく使わせてもらうことにした。
抽出を待つ間に、ジュードがカップがないことに気付くかと少し期待していたが、ないことがわかっているのかいないのかカップに手を伸ばす気配すらない。
本当は全て気付いていてわざと気付かないふりをしているのではないか…と疑ってみたが、多分本当に気付いていないのだろう。
ジュードの分が抽出し終わったので、ついでに自分の分も入れることにする。
棚から自分専用のマグカップを取り出し…誤解がないように言っておくが、ここの棚には幾つかメンバーのマイカップが置いてある。
この研究室を訪れる度にみんなそれぞれカップを持ち込んでいたようだ。
そんな訳で、抽出し終わった二つのカップを手に再びジュードの元へ戻る。
そっと机の上に戻してみるがやはり気付かない。
さて。何となく給仕をしてみたが、このまま気付くまで待つとなると下手をすると夜まで気付かない可能性もある。
声をかけるべきか悩んでいると、ようやく気配に気付いたのかふと前触れもなくジュードが振り向いた。


「…うわっ!?びっくりした」


大仰に肩を跳ねさせたジュードにつられて、こちらの肩も跳ねる。
慌ててカップを持つ手を見れば、水面は揺れていたが何とか持ちこたえたらしい。
火傷をしなくてすんだ…と安堵の吐息を吐いたあと、同じく動向を注視していたジュードと目が合い二人で笑った。








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