隔離文2

□無題
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※文章を肉付けしにくいのでボツ。

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「よし。旅にでよう」

「うん。落ち着いてルドガー」


どこか虚ろな眼差し…要するに死んだ魚の目…で遠くを見つめるルドガーに、ジュードは思わず制止の言葉を投げた。


「どうしたの?」

「だから旅に…」

「うん。それは分かったから。せめて理由を話してから旅に出てくれる?」


あ。止めないんだ。というようながっかりとした表情に、もしや、ただの構ってちゃんだったのだろうか?とジュードは思わず半眼になる。
その一方で、何やら悩ましげな表情でため息をついたルドガーが語りだした。


「…最近、色々と疲れてる気がしてさ…。たまにはのんびりしたいな。って思って」

「……ルドガー」


それで旅に出るというのは少々飛躍しすぎ…というか安直…というか、俗に言う現実逃避というものではなかろうか?と思ったが、思っただけでジュードは口にしなかった。


「…君が旅に出る云々はとりあえず保留にしておくとして。今日の食事当番は僕が代わるから、ルドガーは気分転換に少し散歩でもしてきたらどうかな?」

「いや、でも…」

「たまには僕も作らないと、感覚を忘れそうなんだよね」


そう言われ、自分ばかり作って申し訳ない。と思ったのか気遣いだと思ったのか、苦笑を返された。


「だったら、今日はジュードに甘えるかな」

「うん。甘えていいよ」


何故か照れる二人。
その少し離れた背後。
聞き慣れた声が耳に届いて2人は振り向いた。


「ミラ!これ美味しいわよ」


少し離れた場所にある商店街の道端。
ふわふわと何処からか飛んできたミュゼが、ローエンと会話していたミラを発見してその手に持っていた果物を差し出した。
受け取ったミラが迷わず口元へと運ぶ。


「…ふむ。確かになかなかの甘さだな」


でしょ?とにこやかに微笑み合う二人の更に奥から、アルヴィンが勢いよく割り込んできた。


「ミュゼーっ!お前また店の商品勝手に捕りやがって!」

「…む?そうなのか?ミュゼ」


思わず眉をひそめたミラにミュゼは拗ねたように俯く。


「だって…、ミラに早く食べさせてあげたかったんですもの」

「食い逃げだけはだめだって、あれだけ言っただろうがっ!」

「…とりあえずお金を払ってきますね」


それまで黙って見守っていたローエンが、店主への謝罪のためかアルヴィンの来た道を歩いて行った。


「ん。すまんなローエン。…ミュゼ。物を食べるには対価として相応の金額を支払わなければいけないと、このまえ説明したばかりだろう?」

「ごめんなさーい」

「あ。これ全く反省してないわ」


殊勝に謝るミュゼにアルヴィンの呟きが虚しく響く。
その広い歩道を挟んだ斜め前では、別の集団が店の軒先を占拠していた。


「エリーゼ、これなんてどうかな!」

「えー。エルは王さまには、もっとぴかぴかしたえらそーな色のほうがにあうと思うなー」

「…王様ではない。アーストだ」


少女3人と生き物一匹?に囲まれる男性が一人。
その不思議な集団は、道行く人々の視線を集めていた。


「ぴかぴかで偉そうな色、ですか?」

「うーん。紫とか赤とか金?」


一番年下の少女…エルの提案に、残りの少女二人…エリーゼとレイアが首を傾げている。


「でもそれだと、いつものガイアスっぽくてつまらなくない?」

「…アーストだ」

「だったら、それを差し色にもってきたらどうでしょうか!」

「それならメインはもっと淡い色のほうがいいかも!あ、でも、あえて濃い色を持ってくるのもありだよね!」

「色々と試してみましょう!」


あれこれと商品を手にとり盛り上がる二人。
乗り遅れたエルが、傍らで不動だにせず腕を組んで立っている男性…ガイアスを見上げた。


「…ねぇ、さしいろってなに?王さま」

「……アーストだ」


ここまでの流れを見ていたジュードとルドガーは無言で視線を交わした。


「………」

「………」


その間にも、店主との交渉が難航しているのかアルヴィンとローエンが何やら揉め始め、当のミュゼは再びふらりとどこかへ飛んでいっている。
一人残されたミラは食べ物屋の匂いにつられたのか、違う方向へと歩き始めていた。
相変わらず女の子3人に囲まれている…というより、何やら商品を片手に群がられているガイアスは腕を組んだまま微動だにしない。
正確には動けないのかもしれないが。
ルドガーとジュードはそっと視線を逸らした。


「………」

「………」

「え…、と。…うん。何かごめんね」


彼が遠い目をしていたのはもしかしてこれが原因かもしれない。と、今更だが冒頭のルドガーの言葉の原因をジュードは察した。


「いや、ジュードのせいじゃないし」

「まぁ、うん、そうなんだけど…。僕が謝らなくちゃいけない気がして」


何故だろう。彼に全ての引率を押しつけたつもりはないのだが、やはりこのメンバーのリーダーはルドガーだからか、何となく以前ほど仲間達に目を配らなくなった気がする。とジュードは今までの自分を鑑みて少し反省した。


「とりあえず…僕、ミラを連れ戻してくるよ…」


ふらふらと集団から離れて歩くミラを見かねて、ジュードが走っていった。
その背中を潤んだ眼差しでルドガーは見送る。
持つべきものは頼もしい親友だな。なんて、決して大きくはない背中…けれどもそこに感じる大きな頼もしさと安心感に感慨深く頷くルドガー。
……そう思っていた時期が俺にもありました。
追い付いた先の店先で何やらミラに呼び止められたらしいジュード。
嫌な予感からかルドガーは目を細めた。
何を言われたのか…大体の予想はつくが…案の定目を輝かせているジュード。
どうやら鉄道の模型があったようだ。
ローエンとアルヴィンはひたすら怒る店主に平謝りしている。
相変わらず少女達に囲まれたままのガイアスは、今や大人しく着せ替え人形へとなっていた。
我慢できなかったのか店の中へと突入するジュードについていくミラ。
ある意味、迷子未遂のミラは保護したけれどっ!…あまりの結果にルドガーは呆然とした。


「…ミイラ取りがミイラになった…だと?」


あの頼もしさは何だったのか。
多分親友は戻ってこないだろう。
店主から解放されたらしいアルヴィンとローエンが今度は慌てたように路地の奥へと走っていく。
きっとミュゼだろう。
間違いなくミュゼだ。
ミュゼに違いない。
王様の着せ替えは終わる気配すらなく、ジュードは店から出てこない。


「…よし。旅に出よう」


今度は止めてくれる人がいない事に、ルドガーは滲む涙を自分で拭うことしか出来なかった。








end








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