隔離文2

□無題
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※小話設定。
※ぐだぐだ書いててよく分からなくなったのでボツ。

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「悪夢の再来を予感させる季節がきたね」


影を背負った深刻そうな表情で呟かれた言葉に思わず反応してしまったのが、そもそもの間違いだった。


「……悪夢の再来を予感させる季節がきたね」


声に反応したにも関わらず無言だった所為か、一字一句同じ台詞が再度呟かれる。
どうやら呟きではなく問いかけだったらしい。
仕方なく、文章を噛み砕いてしばし考えた。


「…一応、何が?って聞いたほうがいいか?」

「この不快な日々を耐えぬいて生き残った去年の自分を僕は誉め讃えたい」


どうやら、季節……強いて言えば夏というものに関して何かしら言いたい事があるらしい。


「毎年のことなんだけどな」


と言っても、正直この一言で解決するのだけど。


「違うだろアスラン!去年のアレは例年になくひどかった!しかも今年はそれ以上にひどいってそれこそ冗談だろ!?」

「こればかりは仕方ない」

「軽い!軽いよアスラン!」

「お前のそれは取り越し苦労、とも言うな」


だって、季節は巡るものだ。
春が過ぎれば夏がくる。
そして、いつかは過ぎ去り秋がくるのだ。
四季というのは素晴らしい。


「人は喉元すぎれば苦痛さえ忘れるなんて言うけど、アレは無事に通過したからこそ言えることだよね…」

「だったら、今年も無難に喉元を通過させればいいんじゃないか?」

「それができそうにないから訴えてるんだよ」

「何に」

「人知を越えたナニかに」


とうとう神頼みをしだしたようだ。
だがしかし


「科学とか気象的な分野は神様でもどうだろうか」

「逆に、その程度で揺らぐ存在なら果たしてそれは神様と言えるのだろうか?」

「偶像的な存在に頼ろうとしている身でなに言ってるんだ」


本末転倒だろ。と心のなかで突っ込む。


「彼らは万能だろう?森羅万象すら操れるという」

「それが一つの信仰の対象だからな」

「だったら、気象を操ることくらい指先でできるはず」


……まぁ、個人の神仏像はさて置き。
要するに、夏がくるのが憂鬱なんだろ?


「なのに、可能なことをやらないなんて職務怠慢じゃないか!」

「そもそも神様はお前一人の我儘を聞くための存在じゃない」


思わず突っ込む。
しかし、右から左へと通過したようだ。


「人類の願いは平等に聞いてくれるのが神様だと思っていたのに!」

「だから聞いてくれないんだろ。平等に」

「これは立派な裏切り行為だよ!」

「まず、神様とお前でどんな取引をしたんだ」


思わず半眼になると、何故か無言で首を振られた。


「相変わらず君は屁理屈が好きだね」

「論破したと言ってくれ」

「おまけに疑心暗鬼」

「それを言うなら、お前のそれは明らかに愚痴だな」

「愚痴じゃなくて不満だよ」

「いや。同じ意味だろ」

「…………」

「…………」


しばしの睨み合い。
同時に逸らす。


「…今から憂鬱だなぁ」

「仕方ないだろ。夏なんだから」

「乗り切れる自信がない…」

「何だかんだで毎年乗り切ってるから大丈夫だ」


2、3ヶ月なんて案外、早いものだ。
それこそ、気付いた時には無事に喉元を通過しているだろう。


「俺は好きだけどな。夏」

「僕も嫌いじゃないけどね」


温い風に目を細める。









end








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夏は暑いね。ってだけの話。







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